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第五回目のテーマは「社会的養護と当事者活動」
児童養護施設での生活体験者で、当事者活動をしている渡井さゆりさんとの対話です。
   
・・続き2
渡 井: はい、退所してからすぐの5月に乗りました。
箱 崎 : 世界中を船で旅するピースボートに乗ると聞いて、びっくりされたんじゃないですか?
渡 井: そうですね。3カ月半かけて地球一周の船旅です。
箱 崎: 貯金したお金で行ったのですね。
渡 井: はい。
箱 崎: 行ってどうでしたか?
渡 井: その時は、あんまり自分が人と違う感覚を感じないで済んだんです。結構変わった人がいっぱい乗っていたので。だから、一緒に船旅行った友だちは、今でも仲良くしていますね。いろんな国に行ったことは、アメリカの時と一緒で、良かったんですけど、今強く残っているのは一緒に船旅した友だちです。
箱 崎: ピースボートで出会った友だちとの関係は長く続いているのですね。
渡 井: そうですね。その後もしばらく、ワーキングホリデーに行こう思っていて、またお金を貯めたんですけれど、結局、何か世の中の広さを知って、自分が日本人であることとか突きつけられて、自分が日本の中で恵まれない地域の子どもに何かできないかと。若さゆえに何かそういう思いがあったんです。日本で生まれて日本の文化で日本語を話す自分が今から英語を必死に勉強しても何ができるのかなあと思って……。
思いがけない出会い
箱 崎: 帰国してから、どうしたのですか?
渡 井: 8月には帰国して、フリーターしてお金を貯めようと思って、リゾート地で住み込みのバイトをしました。リゾート地でのバイトって、住む家のない当時の私にとっては便利だったんです。いろんな場所も行けるし。9月は初島で働いて、次の仕事どうしようかなあと思って伊豆の求人とか見ていたら、パーティーコンパニオンを見つけて、これは割がいいと思ってやりました。それで3カ月間と決めてパーティーコンパニオンをやりました。その時に、住み込みの寮に一緒に住んでいた女性がちょっと訳ありの人で、さらにその人を頼って訳ありの中年の女性が寮に転がり込んできたんです。
箱 崎: 住み込みの寮になると、いろいろな事情がある人がいるのでしょうね。
渡 井: そうなんです。一緒に働いていた女性は若い人だったんですけど、その人を頼って、転がり込んできた中年の女性は、小さい子どもを2人連れていて、事情を聞くと、不倫がばれたみたいで、気まずいから夫のいる家には帰れないみたいで。女性だからそういう色恋沙汰があるのはいいんですけど、そういうことを平気で子どもの前で話すのが、私はイヤでした。何だかすごく腹が立って、よっぽどこのおばさんを叱ってやろうかという気持ちになって。でも、ふと、何でこんなに自分はこのことで怒りを感じるんだろうと思って・・・。
箱 崎: 幼い頃の自分と重なったのですか?
渡 井: そうだと思います。1人でぽんと出かけて初島や伊豆で働くとか、同世代の子だと感覚としては考えられないとも思うんです。それに私は本当に人が恋しいともなくて。でも、友だちからは、「今、さゆりちゃん寂しい思いをしていると思うと…」というメールが来たりして、ああ、でも私はそんなこと思わないなあって。
箱 崎: 全く寂しい気持ちはなかったのですか?
渡 井: はい。逆に人とのつき合いって気を使って、人と遊ぶって、小さい時からわからなかったんです。人は自分を搾取する、何か得ようとして関わってくれているんだろうなあって思っていて、それに応えようみたいな感じでした。それで疲れてしまって。今はもう、あんまり人づきあいが好きじゃないんだったらしなくてもいいんだ、と思えるんですけれど、その当時は、そういうのもわからなくて。どうして私はみんなと同じように楽しく人とつき合えないんだろうと悩んだり、恋人に対しても何か不信感とか持ちつつも何か応えなきゃいけないみたいな義務感を持っていて、自分の人と違う感覚に辛さを感じていました。

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