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第五回目のテーマは「社会的養護と当事者活動」
児童養護施設での生活体験者で、当事者活動をしている渡井さゆりさんとの対話です。
   
・・続き12
社会に理解してほしいこと
箱 崎 : 相談事業もしているのですか?
渡 井: あんまり相談事業とは思っていないんですけれど、皆さん来られるようになるまでは、最初は、コンタクトが電話だったりするんで、それが相談を受ける内容のこともあります。
箱 崎: 「施設でこんなことが起きている」という訴えの電話が来ることはありますか?
渡 井: そうですね、施設でボランティアしている方から、そういう状態は良くないのではと言ったら、そのボランティアさんは「来るな」って言われたとか。弁護士の方が毎月開かれている「施設内人権を考える会」では、そういう例を紹介させてもらっています。施設内人権侵害の対処のノウハウとかを持った方がそこにいらっしゃったりするので、その方につなげさせてもらったりとか。そのようにもう少しつながり合って、役割分担ができるともっとよくなると思うんです。
箱 崎: 施設にいる方が相談するというよりは、もう退所した人が、「ここに来たいんだけど」とか「ちょっと最近行きづまっているんだけど」とか、生活の相談をされることが多いですか?
渡 井: そうですね。もう入所している、インケアの方は、できたら施設の職員の方と信頼関係が築けて、それで退所後もうまくやっていけたらいいと思うんです。でもういうことが難しくなっている人をサポートさせてもらえたらいいなと思っています。
箱 崎: 相談の電話では、どういう内容の電話がかかってきますか?
渡 井: 孤立してしまっている人、疎外感を感じている人、それか、もうそれこそ「死にたい」みたいな感じの方もいらっしゃいます。そういう方がつながりができると、ここが居場所になってすごく明るくなられて、よかったなと思うんですね。施設で暮らしていた人じゃない方もそういう方はいらっしゃいますね。
箱 崎: 去年、NPOになりましたね。
渡 井: はい。
箱 崎: NPOになって、委託事業となって国から委託費をもらって運営されるようになって、これからは、「日向ぼっこ」がこういうことをしたいとか、ありますか?
渡 井: 今は、何よりも現状維持というか、ここに見える方に、何気ない心遣いや、仲間だよ、ということを伝えていきたいと思っています。それから、もっとつながりを持って、もっと必要な方には利用していただけるようになれるといいなと思います。本当は、退所後のサポートというのが、必要なくなることがいいわけで、そのために何ができるかというと、社会の中で理解してもらうことだと思うんです。
箱 崎: 社会の中で何を理解してもらいたいのですか?
渡 井: 「私は親がいない」ということを言えて、親がいないことに後ろめたさを感じないために、社会的養護というものがあって、そういう育ちをする人がいることを理解してほしいです。
箱 崎: 人にはいろんな人生があって、違いがあるっていうことですね。
渡 井: はい。血のつながった親子が絶対じゃないということを知ってもらいたいというのが一つと、あとは社会的養護の質を本当に良くしていく必要があると思います。施設での生活についてはあまり強く言われていないので。もっとケアについて、当事者の声というのを援助者の方同士で分かち合うというか、失敗談とか成功例とかも話しながら、こういうふうにやったら子どもとわかり合えたよとか、そういう話をもっともっとして、もっともっと援助の質をよくしてほしいと思います。そのためにお話しさせてもらうことって必要だなと思っています。子どもがどう思っているのか、職員の方がわからないこともあると思うので。

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