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第五回目のテーマは「社会的養護と当事者活動」
児童養護施設での生活体験者で、当事者活動をしている渡井さゆりさんとの対話です。
   
・・続き17
自分にやさしくなった
箱 崎: お母さんとの関係というのは、どんな関係ですか?
渡 井: 母親とは今はちょっと距離を置いています。20代の最初の頃は、「連絡しないでくれ」って言っていました。母はもう働かなくなってしまって、状態が最悪になっていたんですよ。だから精神科に一緒について行ったりしたんですけど。病気ではないんです。でも母は自分のこと病気だと思いこんでいて……。かまってもらいたがっているだけなんです。私は20代になるまで、母親が悪いみたいな思いを心底は思っていなかったんです。でも、きちんと改めて考えてみると、母が私を振り回さなかったらこういうことにはなっていなかったんじゃないかと思うようになって。でも、母は私を頼ってくるし、ちょっとしんどかったんです。母が統合失調症なんじゃないかなと思っていた時は、必ずじゃないけど、遺伝もあるだろうし、祖母も飛び込み自殺しているから、その恐れみたいなものを感じていた時もあったんですね。
箱 崎: 今もその恐れは感じていますか?
渡 井: 今はないですね。
箱 崎: どうして恐れを感じなくなったのですか?
渡 井: そうですね。統合失調症があまり気にならなくなったのは、結構前で、必ずしもそうじゃない方もいらっしゃるとも思うんですけど、私は精神疾患は孤立していたら発症しやすいかと思ってて、孤立してしまっている人っていうのは、もともとそういう傾向があったとしたら、発症しやすいのではないかと感じがしています。でも私はつながりがあるのだから、不安にかられていることが何よりも精神状態にとってよくないなと思って、考えないようにしているんです。
箱 崎: 人とのつながりを強く感じるようになったから、そう思えるようになったのでしょうね。
渡 井: そうですね。
箱 崎: 最近は生きやすくなってきたという感じですか?
渡 井: そうですね。ほんと最近です。のんびりしていたりすると、人に怒られる気がしていたんですよ。普通はそう思わないでしょうけれど、私はそう思っていたんですよ。一生懸命やっていないと人から怒られる感覚があって。でも、誰が私を怒るとか、明確にあるわけじゃないんですけど、何かそういう感覚を持っていた。それが、最近はないですね。たぶん、誰かが怒るっていうより、本当は自分が自分に対してそれはだめって言ってたんでしょうけど。
箱 崎: 自分の中にいる、自分を否定する声があまり聞こえなくなったという感じなのでしょうか?
渡 井: そうですね。自分にやさしくなったんでしょうね。それまでは……。お話するまでは、あんまりこういうことの自覚がなかったんで、今日、お話させてもらって良かったです(笑)。
箱 崎: こちらこそ、どうもありがとうございました。

(了)
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