|気づきの対話 top
第五回目のテーマは「社会的養護と当事者活動」
児童養護施設での生活体験者で、当事者活動をしている渡井さゆりさんとの対話です。
   
・・続き13
25歳の誕生日が転機
箱 崎 : 子どもの時からいろんなことがあって、「日向ぼっこ」を始めて、今サポートする側になって、子どもの時にあったことは、どのように捉えていますか?
渡 井: あった事実は変えられないので、もうあんまり振り返らなくなったんで、肯定的に受けとめていると言ったら肯定的に受けとめているでしょうし。でも、たぶん今は、子どもの時のことあんまり縛られていない感じがします。結婚しても、やっぱり自分は一人だなあとか感じることがあったんですけど、最近ようやく落ち着いた感じがします。それまでは、絶望が自分の希望でもあったので。
箱 崎: 絶望が希望というのはどういうことですか?
渡 井: 悲観的に思って、ちょっと死にたくなったりもしても、でも、実際はそんなことはするべきじゃないと思うから、それが自分の活力源だったんです。そういう気持ちでずっとやってきました。「日向ぼっこ」も、死ぬのではなく、生きるんだったら、どう生きるかって思ってやってきました。結婚しても、まだそんな気持ちはあって。でも、25歳になって、ちょっと気持ちが楽になったことがあって、何か、リセットができた気がします。
箱 崎: 25歳の誕生日に?
渡 井: はい。いつも誕生日の時って落ち込むんです。それで、これ以上こういうふうに生きていくのは嫌だなという気持ちになるんです。でも、25歳の誕生日の時に吹っ切れたんですよね。
箱 崎: リセットという表現をしましたが、消したというのではなくて、何か、乗り越えられた、転換できたという感じですか?
渡 井: これまでのことは乗り越えてきたって思うんですけれど、落ち込むこともまたあるでしょうけれども、死を希望にするみたいなことはなくなったと思うんです。だから何かほんとに、リセットできた気がするんですね。
箱 崎: リセットっていうと、何か、消しちゃうっていう感じがしますが。
渡 井: 自分の中でもまだよくわかっていないんですけど、これまでは、私はどこか義務感で生きていたんです。すごく落ち込んで、ああ、どうしても生きていくんだなあって思った時に、どう生きたいかって自分に問いかけながら。でも、25歳になった時にその義務感みたいなのが払われたんです。
箱 崎: 死を選ばないとしたら、どう生きるかを義務的に感じながら生きていたけれど、そういう義務感がなくなったという感じですか?
渡 井: そうです。
箱 崎: もう死にたいっていう気持ちはなくなったということですか?
渡 井: そうですね、なくなりましたね。昨年の9月が誕生日だったんで、まだ数カ月ではあるんですけど(笑)。
箱 崎: それまでは、死ぬんだったらどう生きるかっていう感じで生きていたのですか?
渡 井: そうですね。死ぬことはできないと思って、落ち込んだ時は、本当にそう思って乗り越えてきたんです。
箱 崎: 今は、死を盾にはしていない?
渡 井: そうですね。
箱 崎: それはとても大きな気づきですね。
渡井さんとスタッフと永野咲さんが打ち合わせ中。

次ページへ
  | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |MENU  
   
 
COPYRIGHT(C)2006 ORANGE RIBBON-NET & THE ANNE FUNDS PROJECT ALL RIGHTS RESERVED.