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引土 絵未(ひきつち えみ)

1976年広島生まれ。
広島県立女子大学(現広島県立大学)卒業後、精神科ソーシャルワーカーとして主にアディクションからの回復支援に携わる。在職中にアメリカの治療共同体に感銘を受け、大学院で治療共同体について学ぶことを決意し、5年半勤務した精神科病院を退職。その後、首都大学東京大学院社会科学研究科社会福祉学専攻博士前期課程修了し、現在、同志社大学社会学研究科社会福祉学専攻博士後期課程にて、アメリカの治療共同体の日本での実現に向けて、現地での研修を重ね勉強中。
 修士論文『「当事者」「援助者」を越えて−治療共同体AMITYにみる援助方法の一考察−』。
 
第7回 ―それぞれの治療共同体―
 2009年2月から26日間で、カリフォルニア州・アリゾナ州・ニューメキシコ州・ニューヨーク州の4つの治療共同体を訪れた。各施設3〜5日ずつ共同生活を送る中で、それぞれの治療共同体の共通のもの、独自なものをみつけたいということが目的だ。

 今回の滞在からみえてきたのは、治療共同体をひとつの家と例えるとすると、財源、運営形式などの基礎となる部分によって、どんな規模かジェンダーのとらえ方などの家の造りが形作られ、そしてその中で共同体の目指す姿やロールモデルの在り方などの家具やインテリアが配置され、様々なスタイルの治療共同体という家が建てられているということだった。しかし一方で、様々なスタイルでありながらもそれらの家が治療共同体であるための共通点もみることができた。

 私がこれまでAmityとして紹介してきたCircle Tree Ranch(アリゾナ州・ツーソン)をはじめ、同じくAmity のAmistad de Los Angeles(カリフォルニア州・ロサンゼルス)と、Almas de Amistad (ニューメキシコ州・アルバカーキ)。さらに今回新たに参加した治療共体のDay Top(ニューヨーク州・レインベック)での体験を通して紹介していきたい。

司法システムとの連携
 最初に訪れたカリフォルニア州Amistad de Los Angelesの共同生活プログラムでは、ロサンゼルスの町中に塀で囲まれた敷地の中、4階建ての大きな建物と食堂・ミーティング場などのいくつかの建物が所狭しと並んでいた。

 最初に全体ミーティングに参加して、まず圧倒させられた。倉庫を改装した広い空間に、100人近い男性たちが集まっていた。その男性たちは、数々の修羅場をくぐりぬけてきただろう雰囲気を漂わせている。その猛者たちの前で、シャツにネクタイ姿の見習スタッフであるアプレンティスがミーティングの司会をしていたが、スチューデントたちのいまひとつ力の入らない様子に、貫禄漂うスタッフが現れ、参加者を鼓舞した。「どうしてここにいるのか考えよう。自分はここにきて大きな希望を得た。さあ、それぞれの希望を話そう」。

 ここロスのAmityの入所者は160名前後、8割が男性となっている。ここへの入所経路は99%が薬物・アルコール関連事犯により裁判所や刑務所、留置所から治療へと導入される、司法システムによって入所しており、全員が単身での入所となっている。
費用負担はこのような司法システムによる公的扶助での入所となっている。入所期間は大部分が3ヶ月だが、より長期的な治療が効果的とのことから、6ヶ月への延長申請することが多くなっているとのこと。

 シャツにネクタイ姿のアプレンティスは、ここでのプログラムを終了して、スタッフになるための見習い訓練中だ。彼らにはシャツにネクタイというドレスコードが設定されている。「気持ちが引きしまるし、気に入っているよ」とアプレンティスの1人が話してくれた。参加者を鼓舞していたのは、ここのスタッフで、その大半がAmityの卒業生とのことだった。彼らは自分自身の経験をシェアしながらスチューデントたちを導く。
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