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治療共同体の違い
 これらのような治療共同体の共通点をもちながらも、それぞれが独自のスタイルを作り上げているが、今回の滞在から見えてきたものは大きく分けて3つの点だ。

財源による違い:
 Amityの場合、ロスは99%司法システムで運営されており、入所期間は州の方針として3〜6ヵ月と短期間になるが、司法システムの対象となる人は誰でも無料で治療をうけることができる。一方、ツーソンは私費入所を中心としているため、長期入所が可能となるが、私費を用意できない場合は入所ができない。
 DAYTOPの場合、司法システムまたは、治療システムを経由し、大多数が公的扶助により無料で入所でき、州の方針としても長期治療が認められているため、1年前後の治療を受けることができる。

規模による違い:
 DAYTOPは男女それぞれ130名ずつの入所施設をいくつも抱える大規模施設になっている。そのため、治療共同体独自の入所者による役割構造や仕事構造の中で常に混乱を抱えている。このような混乱を統制するという意味も含め、日常生活上の「ピア・チェッキング」に重点を置いて運営されている。

 一方、Amityツーソンは約半分の人数で運営されているため、1人1人の言動により注意しながら、グループを通したアファメーションに重点を置いて運営されている。

ジェンダーによる違い:
 Amityツーソンは男女比も同等で、女性がディレクターをつとめている点からも、女性の回復という視点が重視されている。ニューメキシコも母親対象の施設であり、これらの施設では、情緒的つながりを基本とした回復という側面が見受けられる。

 一方、ロスは入所者もスタッフも男性中心で、司法システムへの介入という点からも、対象者は犯罪の文化に生きてきた若い男性が大部分を占めている。ここでは、規律を中心としたロールモデルを基本とした回復が目指されている。 このように、財源、運営形式、規模、ジェンダーなどの様々な違いから、共同体の方向性は異なってくる。このように、地域やそこでの社会システムのあり方、対象者によって、共同体の目指すべき姿、ロールモデルのあり方も異なる。

 これから治療共同体実践をはじめるには、どこで、誰を対象に、どのような財源で、どのような形式で、何を目指すのかを明確にした上で、そのコミュニティに有効な治療共同体ツールを検討していくことが必要となる。

 その共同体の目指す理念を共に創り、ロールモデルとしてその理念を行動で示し、仲間の中での「小さな社会」から人として生き抜く術を身につけながら、人としての回復を目指していく。

 治療共同体が、単に依存症という病からの回復だけではなく、人としての回復を目指す共同体であるといわれるその源が見えてきたように感じた。
(第7回了)

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