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 入所型の施設では、共同生活を送る中でのさまざまな役割や仕事が設定されており(第5回目 共同体の一員になるには 参照)、その中で「小さな社会」を創り、さまざまな人間関係や責任、役割の中から回復を目指している。しかし、通所施設では、利用者が固定しにくく、このような「小さな社会」が創りにくくなる。

 しかしあるスチューデントは、「ここにきて初めて、スタッフに勇気づけられ、人生を変えようと思った」と話してくれたように、「小さな社会」という構造が創りにくいからこそ、スタッフや先輩利用者がロールモデルとしての役割を果たしていると言える。
二人の子どもとソファに座り優しいまなざしで二人の子どもと楽しそうに会話をしていたスチューデントが、「ここに来るまでは、どのように子どもに接したらいいのか、薬なしでどうやって生きていったらいいのかわからなかった。今でも、薬を使わないで生きられるかどうか不安で仕方ない。だからここにきている」と話してくれた。

 自分自身の回復に取り組み、そして母親として取り組むことは容易なことではない。だからこそ、どうやって生きていくことができるのか、一緒に寄り添う場所が必要なのだと感じた。

伝統的治療共同体DAYTOP VILLEGE
 最後に、DAYTOP VILLEGE(Drug Addicts Treated on Probationの頭文字の略字:以下DAYTOPとする)を訪問した。
 DAYTOPは1963年にニューヨーク市において設立された治療共同体である。アメリカで現存する治療共同体の中では最も古い施設のひとつで、治療共同体世界連盟の事務局を担っている。

 若年層から成人まで各年齢、性別によるプログラムを提供し、共同生活プログラム・通所プログラム・アウトリーチセンターのほかに、家族会や地域サービス部門としての高齢者への配食、予防教育事業、スタッフ養成訓練センターなどが幅広い活動を展開している。
 ニューヨーク市郊外のレインベックに5つの施設が点在しており、その中のひとつ成人女性を対象としたスプリングウッドでは、山深いひっそりとした中に3階建ての共同体運営の施設と、2つの住居用の建物、医療施設、教育施設が並んでいる。
 入所者は130名前後で、年齢層は20代から50代まで幅広い。入所経路としては過半数が司法システムを経由し、残りの大部分は病院や家族からの紹介により入所している。ごく少数派であるが自分の意思で入所するケースもある。

 入所費用の負担としては、司法システムによる公的扶助と同様に、残りの大部分も医療・精神保健などの公的扶助を受けており、個人負担での入所はごく少数派となっている。
まず、施設を訪問して、その雰囲気に圧倒させられた。事前のオリエンテーションで「とにかく混乱しているから覚悟していて」と伝えられていたが、誰もが忙しそうに動き回り、誰に何を訪ねたらいいのか分からない状況だった。このような状況はこれまでもよくあることだったが、いつどこで何が行われるのか、様々なプログラムが同時進行で行われているために、その状況を把握するまでに数日間がかかった。

 130人がそれぞれの仕事、役割、治療プログラムをもち、共同生活を送っているのだから、その複雑さは当然のこととも言える。しかし、仕事や役割の部分は入所者の自主運営によって行われている点が治療共同体の特徴だ。
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