第一回 第二回 第三回 第四回 第五回 第六回 第七回 第八回 New!
>>indexへ
1   2   3   4   5   6   7   8
 

引土 絵未(ひきつち えみ)

1976年広島生まれ。
広島県立女子大学(現広島県立大学)卒業後、精神科ソーシャルワーカーとして主にアディクションからの回復支援に携わる。在職中にアメリカの治療共同体に感銘を受け、大学院で治療共同体について学ぶことを決意し、5年半勤務した精神科病院を退職。その後、首都大学東京大学院社会科学研究科社会福祉学専攻博士前期課程修了し、現在、同志社大学社会学研究科社会福祉学専攻博士後期課程にて、アメリカの治療共同体の日本での実現に向けて、現地での研修を重ね勉強中。
 修士論文『「当事者」「援助者」を越えて−治療共同体AMITYにみる援助方法の一考察−』。


 今、日本各地で、治療共同体の芽が少しずつ育まれている。
 約2年前、ニューヨークにある治療共同体世界連盟事務局のDAYTOPのディレクターを訪ねた際に投げかけられた言葉ある。
「どうして多くの日本人が治療共同体に感銘し、治療共同体を訪れるのに、一向に日本では始まらないのか」
 私はその時はっきりと答えることができなかった。
しかし、数年を経て治療共同体モデルは少しずつ広がりを見せている。
 今回、日本で始まりつつある治療共同体モデルの取り組みについて、そして日本で治療共同体を実践する上で大切なことを考えていきたい。

治療共同体の要素
 現在、様々な領域で治療共同体プログラムが取り入れられている。刑務所内プログラムとして、DARC(Drug Addiction Rehabilitation Center)内のプログラムで、それぞれの施設が独自性を活かしながら治療共同体の要素が取り入れられている。
 では、治療共同体の要素とは一体何だろうか。

 日本に治療共同体はあるのかどうか、回復者スタッフが運営する依存症からのリハビリ施設であるDARC(Drug Addiction Rehabilitation Center:薬物依存症に対するリハビリ施設)やMAC(Mary knoll Alcohol Center:アルコール依存症に対するリハビリ施設)は治療共同体かどうか、という議論は常になされ続けている。その鍵となる治療共同体モデルの9つの要素について紹介したい。
1975年に設立された治療共同体世界連盟は治療共同体モデルとして、以下の9つの要素を挙げている。これらの要素は行動や態度の変化に共同体を用いるという社会学習理論に基づいているとしている。

①積極的 な参加
②メンバーシップ・フィードバック
③役割のモデリング
④個人の変化を導くための総合的な形式
⑤共有された基準と価値
⑥構造とシステム
⑦開かれたコミュニケーション
⑧個人間またはグループでの関係
⑨独自の言葉の使い方


全てが治療共同体モデルにおいて必要な要素であるが、ここでは治療共同体の大きな特徴でもある、②メンバーシップ・フィードバック、③役割のモデリング、⑤共有された基準と価値、⑥構造とシステムについて説明していきたい。
次ページへ
>>indexへ
1   2   3   4   5   6   7   8
 
   
 
COPYRIGHT(C)2006 ORANGE RIBBON-NET & THE ANNE FUNDS PROJECT ALL RIGHTS RESERVED.