子ども虐待の防止を考えるとき、私たちは刻一刻と起きている現象と向き合いながら、深い視点で考えていく必要があります。目に見える部分だけでこの問題を読み解こうとすればするほど迷路におちいり、この問題からどんどん遠ざかっていきます。

 子ども虐待を少しでも減らすことを考えるとき、「ことば」の力を使ってみたいと思います。1つの「ことば」に光を照らし、見えない部分を深く掘り起こしていくとき、その「ことば」が光を放ち、新たな希望を少しずつ引き寄せてくれると信じています。

   
 子ども虐待防止を読み解く「ことば」として、3番目に「治療共同体」をあげたいと思います。欧米から入ってきた概念で、英語ではセラピューティック・コミュニティといいます。

 この「治療共同体」とは何かを伝えるため、「治療共同体」の研究をしている引土絵未さんに、連載執筆をお願いしました。引土さんは、精神医療の現場で精神科ソーシャルワーカーとしてアルコール依存症者へのケアを経験した後、現在は大学院で研究しています。引土さんは、本サイトの特集「子ども時代の私」で、自らの体験を正直に語っているように、子ども時代の苦い体験は、引土さんの仕事の選択、そして研究の選択に大きな影響を与えています。引土さんは、医療現場で回復の難しい患者たちに本当に必要なものは何かを探っている時に、「治療共同体」ということばと出会いました。

 そこでは、当事者と援助者が対等な関係を築いていることに衝撃を受けたのです。日本の医療や福祉は、医療者と患者、援助者と当事者は、上下関係が主流で、対等な関係とはほど遠いのが現実です。引土さんは、真のピアサポートを学ぶため、アメリカの「治療共同体」を訪ねました。そこでの体験で「治療共同体」のことばの深い意味合いを心と体で受けとめてきました。それを伝えてもらいます。

オレンジリボンネット管理人 箱崎幸恵 
   
   
 
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