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・・続き3

変わらないもの
 こうして、人は常に変化する。一人一人が変化し、そしてアミティを去っていく。それでも、アミティは常にアミティであり続けることを実感したのは、ミーティングに参加し始めてからだった。
 今回、私はプログラムの4つの段階の中で最終段階のグループに参加することになった。
 ミーティングでは、誰もが温かく私の参加を迎えてくれ、拙い英語での話に耳を傾けてくれた。

 そして、何より驚かされたのは、そのグループの成熟度の高さだった。
 アミティの最終段階のグループでは、「誰もが教師であり誰もが生徒である」という理念がまさに実践されていた。グループの誰かの課題に対して、温かくも厳しいフィードバックが行われる中で、そのスチューデントは様々な気づきを得ていく。そして、また他のスチューデントの課題に対して、今度はさっきまで泣きながら振り返りをしていたスチューデントがフィードバックをおこなう。一人一人が自分の課題に向き合いながら、他の誰かの成長も助け、時には学び手であり、時にはロールモデルだった。

 あるスチューデントは、自分の父親から電話があり、「アミティの利用料を工面するのが大変だ」と伝えてきたことから、父親が自分に愛情を注いでくれないとひどく動揺していた。そのスチューデントに対し、他のスチューデントたちから、「父親に依存しているんじゃないの」「あなたはすごく頭のいい子よ。今の自分にできることを考えて」等の投げかけが行われ、そのスチューデントは、「自分がすごく幼いことはわかってる。お金ことも、お父さんのことも本当は気になるけど、今はここのプログラムに取り組むことが私のすべきこと」と振り返ることが出来ていた。

 そして、次に、数日前に薬物の再使用がきっかけで再入所してきたクリフについて話し合いが行われた。「卒業前の役割に戻るのはおかしい。再使用したことを受け止めて最初からやり直すべき」と厳しい指摘が続く中、ついさっきまで泣きながら振り返りをしていた彼女が、「クリフは一生懸命やってると思う」と伝え、「でも薬物の再使用したことに対してまだ何も語ってない。そこから始めるべきだ」と投げかけた。
 
 自身の弱さを抱え、そこから回復しようとする仲間からの言葉だからこそ伝わるのだ。
そして、それはただ厳しいだけでなく、そこには愛情が注がれている。愛がなければ、誰かに何かを伝えるエネルギーは費やせない。

このエネルギーも、かつて他の誰かから注がれたものが、脈々と受け継がれている。
 

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