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・・続き5

リカバリング・スタッフの存在
 最後に、リカバリング・スタッフの存在についてマイキーは教えてくれた。
 
 「AMITYのスタッフのほとんどは回復した元依存症者で、当事者としての経験を持っていない専門職はほとんどいない。時々、このごく少数の専門職とスチューデントが対立することがある。どうしてかというと、純粋な専門職は当事者としての経験をもってないから、当事者の気持ちが理解できないことがある。例えば、依存症者は時々人と関係をもつことが難しいことがあって、そんな時は誰の助けも必要としていない。そんな時、元依存症者のリカバリング・スタッフはその気持ちを理解できるけど、純粋な専門職はその気持ちを理解できず、助けようとし続けるときがある」

 当事者としての経験をもっていない純粋な専門職とスチューデントが信頼関係を築きに
くいことがあるのに対して、リカバリング・スタッフの当事者としての経験に基づいた援
助の良さについて語ってくれた。
このような経験に基づく援助のよさについてマルセラは、経験に基づく援助の良さは援助者が当事者と同様の経験を有しているということが重要であることを教えてくれた。

 「私はスタッフと対立しようと思わない。どうしてかというと、スタッフはすでにこのAMITYのプログラムに取り組んでいるから、彼らは彼ら自身が取り組んできたことを理解しているし、そして何を目的にしているかを理解している。それに、スタッフは私と良く似たストーリーを持っている。彼らは同じことをしてきているし、いつでも私と関係を築くことが出来ている。誰もが同じように間違いをおかしてきている」

 そして、その当事者と同様の経験には、「依存の問題を抱えた経験」と、「共同体の中で人間としての成長に取り組んできた経験」の2つの側面があることに気づいた。
この2つの側面は、当事者としての経験をもっていない純粋な専門職にはとても重要な点だ。なぜかというと、スチューデントたちがリカバリング・スタッフに対して「依存の問題を抱えた経験」だけを見ているなら、当事者としての経験をもっていない純粋な専門職は何も提供することが出来ないことになる。

 しかし、スチューデントたちはそれだけではなく、エモーショナル・リテラシーができるようになるなど、「共同体の中で人間としての成長に取り組んできた経験」も見ている。この点は当事者としての経験をもっていな純粋な専門職も目指すことができる。
あるリカバリング・スタッフは、私が「当事者としての経験をもっていない純粋な専門職はどうすればいいのでしょうか?」と尋ねたとき教えてくれた。

 「当事者としての経験を持っていなくても、共同体の方法やあり方、理念を学ぶことができる。それがとても大切です」と教えてくれた。

 治療共同体の援助のあり方から、私達が学ぶことができる点は非常に大きい。本で学んだ知識や技術に頼るだけではなく、一人の人間としてどのように生きてきたのか、そして今どのように生き、これからどのように生きていこうとしているのか、それを関わるもの全員で考え、そして一人一人が自分自身の姿勢を示すことで人を導いていく。
これが治療共同体の援助のあり方だ。 

 次回は、このような治療共同体の援助のあり方について、リカバリング・スタッフの姿勢に着目してみたい。
(第三回了)
 
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