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・・続き4

 この理念がどのように共有されているのか、ある一場面を紹介したい。
この日は、(4)与えられた権威ではなく個人的な権威ををテーマに、朝の全体ミーティングで話し合いが行われた。
 ある複数の肩書きをもつベテランのディレクターは最初にスチューデント全員に意見を求めた。「与えられた権威とはどんなものだと思う?」すると、「警察や検事。自分たちの権威をふりかざしているから」などの意見に続いて「デモンストレーターも与えられた権威だ」との意見が出た。

 それに対しディレクターは直接意見せず、ほかのスチューデントに意見を求めた。するとほかのスチューデントから「デモンストレーターは確かに肩書きをもっているけど、役割に応じて行動しているし与えられた権威ではないと思う」と意見が出された。
ディレクターはどのような意見も否定することなくスチューデント同士の議論を進めた後にスチューデントに質問した。「私の地位や肩書きを知っている人はいますか?」すると、誰一人として彼の肩書きを知る人はいなかった。
 しかしスチューデントの多くは彼のこれまでの回復のストーリーや彼の仕事ぶりについてはよく知っている。

 彼は最後に説明した。「私の肩書きを知らなくても、私のことはよく知っているだろう。これが個人的権威です。私は、与えられた肩書に頼るのではなく、自分自身に責任をもって、自身をケアして仕事をしている。個人的権威は自分の存在としての誇りです」
こうして、彼は自身の姿勢をもってスチューデントに自分たちが獲得していくものがどのようなものかを示した。このような話し合いが毎朝全体で行われ、AMITYが大切にするものがどのようなものなのか毎日確認され、共有されている。

日本での治療共同体の実現にむけて
私がここまでAMITYに魅せられたのは、紛れもなく私自身がAMITYに癒され、回復の機会を与えられてきたからだ。
 AMITYは私自身が抱え続けた、喪失の苦しみ、そしてそこから派生してきた援助者としての苦しみに向き合う場を提供してくれた。そして、そこからの回復を導いてくれた。だからこそ、そのAMITYの力がどのようにして創り出されているのか知りたいと思った。それが、日本でいまだに苦しみ続けている多くの人々の救いにつながることができるのではないかと考えている。

 治療共同体が万能であるわけではない。AMITY では、AMITY のプログラムを通して人間として成長することで、個人個人の生活していく地域に戻ってもお酒や薬物を使わない生活を続けていけることを目指している。

 しかし、何度もAMITYへの入所を繰り返すスチューデントやAMITYからなかなか出ていくことができないスチューデントもいる。AMITYが安全な場であるだけでなく、地域の中でお酒や薬物を使わない生活をどのように支援していくのかという点が大きな課題である。このようにAMITYにもいくつかの問題を抱えているといわざるを得ない。しかし、日本の現状に多くの示唆を与えてくれる事には変わりない。
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