第1 回 第2 回 第3回 第4回 第5回
1   2   3   4   5   6   7
 
・・続き3


和解契約のフレームワークは6つのおおきな目標をもとにたてられた。
1. プレースメント(里親やグループホームなのどの施設)の質の向上をはかり、すべての子どもたちに、まず安全な生活を確保する。
2. 子どものニーズを受けとめる許容力のある、安定した居場所を提供してくれる里親や親族のもとでの暮らしを維持する。
 
3. すべての子どもたちが措置30日以内に健康診断、メンタルヘルス検査をうけるシステムをつくる。子ども一人ひとりのニーズに見合うケアプランを立てる。メンタルヘルスのアセスメントは心理士など専門のプロフェショナルが迅速におこなう。
 
4. 里親教育を徹底して、子どものケアにあたる人たちへ十分なトレーニングと支援をあたえる。
 
5. きょうだいが一緒に暮らすことは、子どもたちの“ベスト・インテレスト”であることを再認識し、きょうだい分離を極力防止する。もしも、きょうだいが一時的にでも別々の場所に措置されることがある場合は、頻繁で有意義な面会の機会を与える。
 
6. 十代の里子たちのケアの向上をはかる。ティーンがシステムを離れる前、大人になる準備をととのえるプログラムを充実し、家出少年少女の数を減らす。
   
 ワシントン州の児童保護局は、かかげられた6つのゴールに向かって確実な成果をあげるように要求された。ひとつひとつのゴールにはさらに、ソーシャルワーカーがとるべき“アクション・ステップ(手順)”が決められ、児童保護局の努力の成果が上がっているかどうかを実際の数値ではかるための“ベンチマーク(数値基準)”を導入した。

 この和解契約には児童保護局の成果を見守るための監督委員会(オーヴァーサイト・パネル)が5人の委員をむかえて編成された。メンバーには全米でも有数な児童福祉のエキスパートが選ばれた。委員会は児童保護局の成果を定期的に“報告書”としてまとめる。
2006年と2007年の委員会の報告書の結果は芳しくなかった。
 里子たちのプレースメントの維持が以前とあまり変わっていない。つまり、数多くの子どもが何度も里親を変わっていることが指摘された。批判を受けたのは児童保護局だけではなかった。州政府がブラーム和解交渉の目的に見合った予算を組んでソーシャルワーカーたちを支援していないことも、報告書の中に明らかにされた。

 2008年7月1日付けのシアトルタイムスに「ブラームの原告側の弁護士たちは、児童保護局の成果の遅れを裁判所に持ち込んだ」という記事が掲載されている。判事は里子たちの措置後30日以内の健康診断と、きょうだいの面会を直ちに改善するように命令し、ブラームの目的達成のためには、ソーシャルワーカーのケースの数を減らすことがいちばん大切だと発言したことが報道されている。

 この新聞記事と時をたがえるようにして、エヴェレットの児童保護局では新しいソーシャルワーカーを数人雇った。きょうだい面会のためのプログラムも新たにもうけられた。きょうだいを送り迎えして週に一度、公園や海岸に連れて行って面会させるサービスのための予算が拡張されていた。

次ページへ
1   2   3   4   5   6   7
 
   
 
COPYRIGHT(C)2006 ORANGE RIBBON-NET & THE ANNE FUNDS PROJECT ALL RIGHTS RESERVED.