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・・続き2 ワシントン州の児童福祉の改革 1997年の連邦法樹立から12年たった今も、米国のいたるところで、児童福祉の実践の改革が進んでいる。ワシントン州では、改革は5つの形をとっている。 1.連邦政府のプログラム・インプルーブメント・プラン(PIP) 米国連邦政府は、2002年からPIPという計画案を掲げて、各州政府に児童保護の改善を呼びかけてきた。政府はこの改革のために、従来の「プロセスを重視する改善案」から、「結果を重んじる改善案」に方向を切り変え、この国を挙げた一大児童福祉改革のために、予算は増やさず、予算の枠組みもほとんど変えずに、州政府に成果をあげるよう命令した。州が約束事項として提出したゴールに到達しないと、連邦政府はその州の児童福祉資金を削減する制裁を加えた。 ワシントン州の場合は、2006年、23の改善規定のうち17の規定に合格した。ソーシャルワーカーが子どもの家庭訪問を頻繁に行っていない、そして、メンタルヘルスのサービスが徹底していないことなどが、今後の課題、として残った。 2.州知事からの命令 ワシントン州の知事はクリスティーン・グレゴワイアという女性だ。里子だけでなく、子ども全体の安全ということに関心をよせてきた州知事は、児童保護局の虐待立ち入り調査の出頭時間を縮めることが肝心だと考えた。そして、虐待ホットラインが受けた通告のなかで、立ち入り調査が必要というリスク・アセスメントを受けたすべてのケースの現場調査を72時間以内に済ませるように示唆した。 数年前までは、ソーシャルワーカーの緊急レスポンスの対応時間は24時間から10日以内と、ケースによって異なっていた。この州知事命令の成果が上がり、現在は9割以上のケースが、子どもとの最初の面会を72時間以内に短縮している。 3.ブラーム・セトルメントBraam Settlementという和解契約 1998年、ティム・ファリスというひとりの弁護士が、13人のティーンの里子たちを代表してワシントン州を相手に訴訟をおこした。この若者たちは、精神衛生などのケアも十分に与えられないまま、安全管理のずさんな里親や施設を転々としていたことが訴訟の内容だった。なかでもジェシカ・ブラームという12歳の女の子はすでに34回も里親を変わっていることが陳述内容に露呈された。 この訴訟はその後、ジェシカのラストネームをとってブラーム裁判と名づけられ、コロンビア・リーガル・サービスとユース・ローというふたつの弁護団を原告側に加えて、ワシントン州未聞の最大の訴訟となっていった。言うまでもなく、原告側の意図は、訴訟によってこの13人の若者たちの生活向上をはかっただけではなく、州に住むすべての里子たちの安全とケアの改善、そのためのソーシャルワークの実践と方針改革をめざした、集団訴訟だった。 公判では、およそ3500人の里子たちが3ヶ所から10ヶ所のプレースメント(措置)を経験していることが原告によって明るみに出され、陪審は2001年の12月、子どもたちは基本的な人権を侵害されたとして、原告側を支持する判決を下す。ワシントン州側はこの判決に対して上訴を要求したことから、裁判は州の最高裁判所に送られた。 2003年12月、最高裁は「里子たちには安全を確保する人権が保障されるべきで、州はそれに対して適切なサービスを与える義務がある」ことを主張し、地方裁判所に再度の公判を命じた。公判が始まるはずだった2004年9月、判事は被告と原告の和解交渉を宣言し、6年の長きにわたって争議されたこの裁判はようやく和解契約というかたちで解決を見た。これがブラーム・セトルメントの成立である。 (次ページへ) |
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