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・・続き6
母親の精神鑑定の結果はうつ症とPTSD
ナディアはサイコロジストから精神鑑定を受けた。診断は、うつ症とPTSDだった。サイコロジストはナディアの赤ちゃんが生まれたら、母親からは分離せず、児童保護局が母子の監督とケアプログラムを与えることを推奨した。
2008年3月11日、ナディアはブラッドリーを帝王切開で出産した。何も異状のない健康な赤ちゃんだった。ペアレント・トレーナーや訪問看護士の助けをうけて、ナディアの子育ての最初の1ヶ月は何事も無く過ぎていった。
4月の最後の日曜日、祖母はナディアと赤ちゃんを自宅のディナーに招いた。夕食をしっかり食べなかったトミーにナディアは逆上し、赤ちゃんを片手に抱いたまま、家の中を気が狂ったように走り回った。トミーは母親が怖くて泣き出した。
私は、週に一度はナディアと赤ちゃんの様子をうかがいに行った。ある日、アパートに着くと、家中が煙に取り巻かれていた。ナディアはトーストが焦げたから、という説明をしたが、トースターを触ると、もうすでに冷たくなっている。しばらく時間がたっても窓がどこにあるのかも見えないほどに煙が蔓延している部屋。その中に、ぽつんとひとりで眠っている赤ちゃんを見て、私は背筋が冷たくなる思いをした。
ペアレント・トレーナーのマーシーはブラッドリーと母親の絆について懐疑的だった。
「ナディアは赤ちゃんのオムツを取り替えたりミルクを上げたりはするんだけれど、赤ちゃんとの感情的なつながりが薄いように思う。赤ちゃんには表情がまったくないし・・・ナディアはブラッドリーを自分の“おもちゃ”のようにあつかっているのを何度も見ました。」マーシーはそう言った。
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