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・・続き7 アンソニーの里親のリンダが私のほうに向かって歩いてくる。おおきな笑みを浮かべて彼女は言った。「アンソニーの養子縁組の手続きがおわったら、私は里親を終業しようと思っている。今まで8年間、児童保護局に頼まれてたくさんの里子のケアをしてきたけど、これからはアンソニーと二人だけの家族になりたいから」。 パーティー会場に里親のキャサリンとヘンリーの姿が無い。この夕食会のことは彼らも知らされているはずなのに・・・私は、教会の裏庭にでて、キャサリンたちの自宅に電話を入れた。もう七時をまわっているのに米国最北部のこの地の夜は明るく、雨後の庭に紫の花が光っている。ヘンリーが電話口に出てきた。 「今日は陽気がいいんで、キャサリンが子どもたち、みんなつれて、ビーチに行っています。ぼくは、一人で家にいて、サマンサの部屋の壁を彼女の好きなパステルのピンクに塗りかえるところです」といって笑った。普段は口数の少ない、ヘンリーの声が弾んでいる。キャサリンもヘンリーも今晩の里親感謝ディナーのことなどは、すっかり忘れていたらしかった。この家族は未来に向かって“新しい家族”として動き始めた、と私は思った。 6月の火事、そして・・・ 6月3日、5時すぎ、エヴェレットのオフィスの大きな3階建てのビルの周りに、テレビ局の車が何台かならび、事務所には数人のソーシャルワーカーやスーパーヴァイザーがまだ仕事をしている。カシノ通りのアパートで火事があり、2歳の男の子が置き去りにされているのを隣人が警察に通報。警察官と児童保護局のソーシャルワーカーが同時に現場に駆けつけ、子どもを一時保護した。両親が鍋を火にかけ忘れたままアパートを出て、煙に巻き込まれた子どもは、無事に助け出された。 ソーシャルワーカーは両親をオフィスによび、緊急家族会議に参加させた。会議中に、両親は2ヶ月前に西アフリカから来たばかりの移民の夫婦だということがわかる。ふたりが反省の意をまっすぐにあらわし、子どもを取り上げられた恐怖から会議中に泣き出したこと。児童保護局のサポートを即座に受け、子どもを安全に育てていくことに同意したことにより、このケースは裁判に持ち込まれなかった。子どもを両親に戻し、ソーシャルワーカーのテレビ局や新聞社のジャーナリストとの対応が終わったときには8時を回っていた。 次回には、その後のアリスの生活が出てきます。 そして新しい母子と里親のエピソードが始まります。火事のあったカシノ通りの貧困地区の活性化のためのコミュニティーの活動が、児童虐待防止の一環として描かれます。 (了)※第二回へ続きます。 (次ページへ) |
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