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第五回目のテーマは「社会的養護と当事者活動」
児童養護施設での生活体験者で、当事者活動をしている渡井さゆりさんとの対話です。
   
・・続き7
箱 崎 : そういう相談は、先生や施設の職員のにはしなかったのですか?
渡 井: しなかったです。。
箱 崎 : 何か、相談するっていうこと自体があんまり?
渡 井: たぶん知らないですね。だから、中3の3学期の通知表に、「君は決して一人で生きているわけではないんだ」みたいなことを担任の先生に書かれているんですよ。それがすごく引っかかって、でも「そんなこと言われてもなあ」って感じでした。今になって思うと、私は本当に一人で生きているみたいな感じだったと思います。集団の中でも。ただ、先生もそんなこと書くんだったら何かしらのアプローチを持ってくれればよかったですね(笑)。その当時は先生がそんな風に思っているなんてわかりませんでした。
箱 崎: 人に相談するっていうこと自体がどういうことかわからない。
渡 井: あんまり、人に聞いてもらいたいみたいな気持ちはなかったです。いじめられていたら、私、こんな状態に置かれてるんだけど、これって不当だよね、みたいなことになると思うんですけど。
箱 崎: その頃、渡井さんはそういうイヤなことを忘れるような好きなこととか、ありましたか?
渡 井: 私は中2の時まで万引きしていて、それで捕まって、万引きしなくなりました。たまたま一緒に悪いことやってた子が、悪いことやっているのに、「将来、外交官になりたい」とか言ってて(笑)。私は外交官とかさっぱりわからなかったんですけれど、「もっと頭がよくなきゃなれない」ってその子が言っていて、「塾に行きたいけど、一人では行きたくない」みたいなことを言っていたんです。悪いことをしているグループで「塾に行こう」みたいな話になって、変な話なんですけど(笑)。
箱 崎: 面白い展開ですね。
渡 井: 私は施設で暮らしているからたぶん塾には行けないなって思ったんですけれど、勉強はあんまり嫌いではなかったんです。小6からちょっと勉強して普通にはできるじゃないですか。勉強がそんなに嫌いじゃないのと、あとは人としゃべったりとかしなかったんで、暇な時間に勉強したりしていたんで、塾って面白そうだなあみたいな感覚で、「塾に行かせてください」と、施設の職員にお願いをしたんです。そうしたら、検討してくれて、結局は塾に行けることになったんですよ。でもその「外交官になりたい」と言っていた子は、もっと状態が悪くなっていって、同じ中学校からは誰も行っていない塾に私一人が通い始めたんです。そうしたら、勉強がおもしろくなってずっと勉強していました。みんながゲームやサッカーやる感覚で、初めて自分で打ち込むものができて。自分の打ち込み方次第で変わってくるじゃないですか。ゲームやスポーツもそうだと思うんですけれど、私にとってそういうことは初めてだったんで、面白くて。
箱 崎: 勉強して成果が出てくると、やる気も出てきますからね。
渡 井: そうですね。だから、ばかみたいに朝早起きして勉強して(笑)。
箱 崎: そうすると、成績が徐々に良くなって・・・。
渡 井: そう、そう、成績が上がっていきました。それが面白かったです。
 
渡井さゆりさん

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