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・・続き5

〈法廷介入、そして母親への支援〉
 ケースは正式に法廷に持ち出され、私はステーシーと一緒に出廷した。ここからドリスたちの家族のケースは私にバトンタッチされた。私は、親たちがイジーとハンナに週に2度ずつ面会できるように、児童保護局の訪問室を確保した。ドリスは子どもたちに会いに来たが、父親たちはふたりとも、さっぱり訪問をしないどころか、どこかに姿をくらましてしまった。

 ハンナはからだは大きいけれど、もの静かな子どもで手がかからない。それにくらべて、イジーは異常なまでのエネルギーで祖母の言うことをいっこうに聞かない。祖母からは私に、毎日のように悲鳴交じりの苦情の電話がかかってきた。「イジーを何とかしてくれないと、私も主人も気が狂いそう。」イジーのADHDが疑われた。
私はイジーを保育園に1日数時間ずつ、この子どもの社会性や発育をしっかり見守ってもらうことにした。祖母の負担を軽くするためでもあった。ペアレンティングの指導員に連絡を取り、祖母の家に週に2回ずつ出向いて、イジーの子育ての援助をしてもらうことにした。

 12月。クリスマスもせまって、母親のドリスが夕方5時過ぎに児童保護局に突然ひとりでやってきた。ジェフから「怒鳴られる、蹴られる」の暴力をふられて逃げている、ということだった。私はDVにくわしい同僚のソーシャルワーカーのシンシアの助けをかりて、その夜ドリスの対応に2時間かけた。

 DVには加害者と被害者をめぐるひとつのサイクルがあることを、“ドメスティック・バイオレンス・パワー・アンド・コントロール・ウィール”という輪の形をした図式を使って説明した。私たちはドリスに、自分の身をまず守ること、そしてそのことが子どもたちを最終的には守ることだということを話した。DVの被害者にはサポーティブであることが大切だ。そして、必ず解決策があること、ひとりではないことを強調することも重要だ。

 シンシアと私は、母親に、その晩のうちに警察署に行ってジェフからの暴行の被害通告をすましてしまうよう説得した。エヴェレットにはDVの被害者のための総合支援を行うドメスティック・バイオレンス・コアリションがある。ドリスには、その晩は友人の家に泊まって、次の朝、コアリションに連絡をとって、ケースワーカーから接近禁止令を取るための手続きの手助けを受けることをすすめた。

 コアリションに行けば、DVのシェルターへの入所、そして、被害者のためのグループ治療、そして今後の自立のための支援の段取りをすべてしてくれるはずだ。私たちが話し合ったことをひとつひとつを箇条書きにまとめて、ドリスはそれに、サインした。これから、自分がこういう行動をひとつひとつ取っていく、ということをプラン書きのようにしてまとめさせたのだ。私たちは、そのプランをしっかり支えることを母親に知らせて、彼女を警察署まで送りとどけた。

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