箱 崎 : |
そうなんです。 |
青 木: |
だから、その彼女がスパーンと出した、その言葉っていうのがすごく新鮮でしたね。
ああ、そうか、怒っていいことなんだって。でも、それですぐ翌日から出せるわけじゃないんですけど、そういう認識が一つできたことで、だんだんと父とやっぱり距離ができていくんですよね。それが本当に時間がかかるんですよ。
もうちょっと鋭い感性の人だったら、芸術家っぽい人なら、わっと表現していくんだろうけど、私なんかは本当に一つ一つ…。特にきょうだいの真ん中ですからね。兄は兄で派手にやってる、妹は妹でまたすごく母にべったり甘えている。そうすると、私がこれ以上出しちゃったらうちはめちゃくちゃになるんじゃないかとかね、子どもがそんなことを考えちゃうんですよね。そんなことは親が考えればいいことなのに(笑)。 |
箱 崎 : |
そうですよね。でも、そういうふうに考える癖ができちゃっているんでしょうね。 |
青 木: |
そうなんです。だから、ある意味で親子逆転ですよね。 |
箱 崎: |
ええ、そうですよね。逆に親の方が考えてないですよね。 |
青 木: |
そうなんですよ。後で考えたら腹が立ってね、もう(笑)。 |
箱 崎: |
そうですよね。親は自分の半分も考えていなかったりね(笑)。 |
青 木: |
そうなんです、もう。私も母に随分年取ってから文句言って。 |
箱 崎: |
ええ、わかります。そういうお友だちが認識を変えて、転換させてくれたことで、すとんと自分の中に落ちて、少しずつ変わっていって楽になっていったんですね。 |
青 木: |
そう、楽になりました。父をちょっと客観視できるようになっていって、「ああ、叩いてもいい存在なんだ」って。「そのくらいのこと私はされているんだ」っていう認識ができたときは、叩かれたときに怒れるようになったんですよ。それを表には出せなかったですけど、心の中で「冗談じゃないわよ」って思うことができたんです。それだけでも私にとってはすごく楽になることだったんですよ。 |
箱 崎: |
そうですよね。それまでは、叩かれたときは自分が悪いって思っちゃうんですね、どうしてもね。 |
青 木: |
あっ、やっぱりまずっちゃったとかね。叩かれるようなことをしてしまったとか、全部自分を責めるんですね。 |
箱 崎: |
その向きが変わったわけですね、ひどいのはあっちだって。 |
青 木: |
そうなんです。それはすごく大きなことでした。 |
箱 崎: |
大きいですよね。その親友の方にずっと言えなかったことをいろいろ言えるようになっていったんですか? |
青 木: |
言うようになりましたね、初めて。友だちにそういうことを全部しゃべったのは彼女が初めてですね。 |
箱 崎: |
話したときどうでしたか? |
青 木: |
私がしゃべって、彼女が親身に「ふん、ふん」って聞いてくれるタイプでもなくて。所詮彼女もわがままですから言いたいことポンポン言う。こっちも言う。そんな関係でしたから、気を使わないんです。こういうことを言ったら嫌がるんじゃないかとか、こういうことを言ったら、この人、私を軽蔑するんじゃないかとか、そういうことを一切感じないでいられる。そのような友だちに、私は15歳で初めて出会いました。 |
箱 崎: |
それは青木さんにとって、とっても大きな出会いですね。 |
青 木: |
大きかったです。結局、その後、彼女は大阪の方の学校に入ったし、私は東京の大学に入っちゃったんで、道は分かれていくんですけれど。高知へ帰ったときにまた彼女と会ったり、彼女が何年後かにきょうだいと一緒に東京に出てきて、またワイワイしたり、あれから今までずっと彼女とは親しい関係が続いています。
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