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箱 崎 : |
それはなかなか表に出せないから、お友だちには見えないでしょうね。 |
青 木: |
そう、見えないから、カバーしていますからね。 |
箱 崎 : |
そういう、勉強もできるし、面倒みもいい優等生っていう。 |
青 木: |
そう、そう。もう、その落差が逆に私を責めるんですよ、「うそをついている」っていうね。 |
箱 崎: |
そうなんですね |
青 木: |
本当の私は違うのにって。そのころの日記なんて、全部そのことを書いていますよ。 |
箱 崎: |
日記をずっと書かれていたんですか? |
青 木: |
毎日書いていました。でも、一時期に全部処分しましたけどね、思うところがあって。もう随分年取ってから。 |
箱 崎: |
ああ、そうなんですか。 |
青 木: |
小学校1年生からずっと毎日。最初は絵日記で。まあ、書くことが好きだったんですね。だから、今残しておけば結構面白い記録になったのかもなんて思うんだけど、私個人としては、もう嫌だったんで。でも、やっぱりそのときのことを克明に書いていますね |
箱 崎: |
起きたこととか自分の感情とかも書かれたのですか? |
青 木: |
そうです。腹立ち紛れも多かったですね。高校のときに、母に読まれていることがわかって。そのときにすごい腹が立って、高校時代の日記は破り捨てちゃったんですよね。でも、その中学のころの日記は、わりと最近まで持っていたんですけれど、全部処分しました。 |
箱 崎: |
すべて処分したんですか。 |
青 木: |
もうこの年だし、病気かなんかで急に死んじゃって残っても嫌だしなんて思って(笑)。何となく準備始めちゃってみたいな感じがありますね。 |
箱 崎: |
日記を書くことで気持ちを発散させていたんですかね。 |
青 木: |
でしょうね、きっとね。 |
箱 崎: |
そのときのいろんなモヤモヤを。 |
青 木: |
本当にそうです。 |
箱 崎: |
人には言えない気持ちを書いて表現していたんですね。 |
青 木: |
そうですね。時にはすごく幻想を書くんですね、自分の理想って言えばいいのか。優しいお父さんがいて、愛された家族で、あったかいだんらんみたいなものを書いてしまって、最後に、「これはうそです」なんて書いてあるんですよ |
箱 崎: |
日記に? |
青 木: |
日記に(笑)。一日の中でそれをやっている間が、きっと私の自分の気持ちと向き合う、たった一つの時間だったんでしょうね。机にさえ向かっていれば、勉強していようが、日記を書いていようが、本を読んでいようが、母は何も言わない。勉強をよくしている子だと思っていましたから。その時間だけが私の時間だったんでしょうね。昔の子は、家の中のことを手伝わなきゃいけなかったんです。小学校4年生からご飯の支度とか、母が帰る前に火を起こしてお湯を沸かしてなんていうのをやっていましたからね |
箱 崎: |
大変ですね。 |
青 木: |
だから、みんなが楽しく遊んでいるときに一人だけ抜けて帰ってくるっていうのは結構寂しかったんですけどね。でも、そんなもんだと思ってやっていたんで。 |
箱 崎: |
日記は、小学校から高校までずっと書かれていたのですか? |
青 木: |
今もずっと続いています。ほとんど毎日ですね、忙しくないと。今はもう、備忘録という感じですね。その日にあったこと、何時にどことか、誰と会うとか、そんなんですけど、そのときに大きな事件があったら、それに思いを書いたり、途切れたりしながらずっと続いています。 |
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