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続き2・・・

 さて、家庭養護促進協会では、これらの「試し」の表出を徹底して受けとめることを里親にアドバイスしている。制止したり、叱るよりはしたいようにさせてやってほしい、と。 これらはどれも制止しなければ、短期間のうちに小規模化し、やがて終わっていく。

 (2) について。たとえば二歳九ヶ月で体重一五キロのれい子。彼女は施設から引き取った日から、里母にぴったり。まるで蝉の如く離れない。うるさがると泣き喚き、おしっこジャー、ウンチぼっとん。
 「何が七〇センチですか。私の場合はゼロセンチでした。抱いてトイレに行き、抱いて洗濯物も干し、抱いて食事の準備、おんぶして掃除するという状態が二ヶ月続きました」(里母の報告)

 (3) について。多くの子どもが噛みつく。はだかのからだに、むき出しの腕に。服の上からも、歯型がくっきりつくほど噛みつく。ある五歳児は「お母さん、お願いだから噛ませて!」といった(対処法・母と子で噛みっこをして遊びに変えてしまう)。
また多くの子どもが里親を殴りにくる。これもけっこう痛い(対処法・思い切って叩かれても痛くないものでチャンバラをする)。手あたりしだい物を投げる。棚の本や紙切れをばらまき部屋という部屋を散らかす(投げられて困るものはしまっておく)。
 
 おそらくこのような攻撃性の表出は、赤ちゃんの頃のおっぱいによる受けとめられ体験の欠如すなわち口唇期の愛の充足感の欠如が背景にあるのだろう。口唇期における受けとめられ欲求が受けとめられないまま、肛門期のしつけの段階に移行してしまったことによる退行であり、怒りである。こうした怒りの表出ないし退行は新しい受けとめ手を得てはじめて可能になる。言い換えれば新しい親子関係を里親とのあいだに築きたいという子ども自身の渇望といえるような欲求という側面があるのではないか。

 過食についてやや詳しく紹介してみよう。
 過食とは、たとえば三歳くらいの子どもでも大人の二〜三人前を食べることを指す。お腹がパンパンになってもまだ食べたがるのだ。
 『親子になる』によると五〜十年前には(一九九〇年前後の頃)、里親に引き取られた子どもの九十五%に過食が出た。ところがここ数年、なんでも食べたがる過食症状はどんどん減少し、特定のものを気のすむだけ食べたがる偏食的過食をする子どもが増えてきているという。特定のものとはスナック等の袋菓子、味付け海苔、だしじゃこ、お菓子、プリン、ゼリー、ヨーグルト、ヤクルト、果物等であり、これらが次々と過食の対象になっていくのである。

 ついでに述べておくと、この偏食的過食はまるで遊びの対象が次々と変わるようなイメージとして思い描ける面がある。D・W・ウィニコットの遊びの輪の核である移行現象と移行対象という視点を想起する。偏食的過食は遊びと言う要素からの分析が必要であることが予想できる。
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