|
第1回目 | 第2回目 | 第3回目 | 第4回目 | 第5回目 | 第6回目 |
|
続き2・・・ 「いるのにいない」状態という防衛法がもう一つ、子どもたちに残されているのを忘れることはできない。迎合という道である。ほんとうの自分を深くにしまいこんで教員や親、おとなたちに歓迎されるような見せかけの自分をつくることである。その典型が「いい子」に自分を作り上げることである。 「いい子」という迎合を現実対処法として行使する例を紹介してみたい。 大阪家庭養護促進協会の発行した冊子『親子になる』(文責・岩崎美枝子)のなかに興味深い記述がある。大阪家庭養護促進協会は四十年以上の長きにわたる、赤の他人同士が血のつながりを越えて親子になってゆくためのサポートを献身的につとめてきた歴史をもっている。『親子になる』の文責者である岩崎美枝子さんはその歴史とともにあるベテランスタッフであり、岩崎さんの養育に関する考えに私はこれまで計り知れないほどの恩恵を受けてきた。(注1) 興味深いと述べたのは、次ぎのような箇所である。里親夫婦が施設から我が家へと子どもを迎えて以降、親子という関係が成立するまでを、すなわち〈親子になる〉までを以下の三段階にわけて考えているところだ。 ・ 見せかけの時期 ・ 試しの時期 ・ 親子関係が形成される時期 「いい子」という迎合の例として紹介したいのは第一段階の「見せかけの時期」なのである。 施設から我が家に子どもを迎えて以後の最初の数日間、短い場合で約三日間、長くても一週間くらい、子どもは里親に対してとても「いい子」に振る舞う。見せかけの時期は、そのような見せかけの自分を里親夫婦に示す時期を指している。見せかけの自分、ここには、「いい子」に振る舞う身体はあっても、ほんとうの自分はいない。 『親子になる』は見せかけの自分をこんなふうに記している。 〈例えば、出された食事はしっかり食べてくれる。大きな声で「いただきます」「ごちそ うさま」と言ってくれるし、三才ぐらいの少し気のきいた子ならすぐに洗面所にかけ こんで、歯を磨いたりします。朝は六時半になるとむくっと起きてくるし、夜は八時 半になるとこてっと寝てくれます。テレビも施設で決められていた時間になると「テ レビ見てもいい・・・?」と聞きます。そしていつもマンガを見終わって、「テレビお しまい」と言いながらスイッチを切ったりしてくれると、どんな里親でも感激してし まうところです。だから里親達は「せっかくつけてもらったこの良い習慣を残して、 悪い所だけを直せばとても素晴らしい子どもにそだつのではないか」と期待してしま うのです。〉 (次ページへ) |
|
COPYRIGHT(C)2006 ORANGE RIBBON-NET & THE ANNE FUNDS PROJECT ALL RIGHTS RESERVED. |