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・・続き3 デモンストレートによる導き そして、このようなエモーショナル・リテラシーを獲得していく過程をどのように示していくかというと、それがデモンストレートだ。デモンストレートとは、何かを伝えるときに単なる情報を伝えるのではなく、自分自身の経験や姿勢を通して伝えることだ。 マイキーは、自分自身が苦しみや悲しみから救われた経験を通して、私に感情を表現する方法を伝えてくれた。リカバリング・スタッフは、自分自身の虐待の経験やアディクションの問題から回復していったストーリーを分かち合うことで、どのように苦しみに対処していくのか示してくれた。 日本で援助者として働いている時は、自分の問題をいつも棚上げにしていた。 「援助者はいつでも強く、正しくなければならない」という思いに駆り立てられ、援助者としての技術や知識を得ることに必死だった。「援助者としてどうふるまうべきか」ということに囚われ、自分自身の弱さや感情にふたをして働き続けてきた。そうすることでしか働き続けることができなかった。 しかし、AMITYはまったく違った。 援助者であるリカバリング・スタッフは、自分自身のかつての経験や感情をありのまま語り、そこから自分がどのように回復しているのかを示すことで人を導いていた。そこには確かな知識や技術が存在するが、知識や技術だけに頼った援助はしていない。スチューデントたちは援助者の姿勢に導かれ、自らをありのままに語り、新しいメンバーを温かく迎え入れる。 AMITYにはその理念を示す14項目の「治療共同体の基本的前提」というものがある。 私は、その中のひとつ 4.与えられた権威ではなく自分自身の権威を という理念を聞いて衝撃を受けた。 これは、「肩書きや名声といった与えられる権威ではなく、人間的なレベルで獲得しうるものとして環境は整えられる。与えられた立場の違いなどから生じる共同体における非対等な力の排除を目指す。」ということを目指している。 日本で援助者として働いていた時に、「ソーシャルワーカーである私としてどうふるまうか」と考えることはあっても「一人間である私としてどうふるまうか」と考えて援助するという思考すらなかった。 AMITYの援助者たちの専門性は、一人の人間としてどのように生きてきたのか、これからどのように生きていくのか、感情をありのまま受けとめ表現し、自分自身の経験を語り、その回復の姿勢を示すことを通して発揮されている。 このデモンストレートとエモーショナル・リテラシーこそがその専門性の源となっているのだ。 (次ページへ) |
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