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第二回目のテーマは、「依存症と子ども虐待」アディクション・カウンセラーで依存症の回復者の
スコット・ジョンソンさんとの対話です。
   
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地獄から足を遠ざける

箱 崎 : 最後に、スコットさんが大事にしているセルフケアについて聞かせてください。スコットさん自身が、回復したことで、これはすごく良かった。とても役立ったと思うことはどんなことですか? いくつか具体的に教えてほしいです。
スコット: 私は自分の課題にあった自助グループ、AAアラノンCoDAに定期的に行き、仲間と分かち合います。それが私の優先順位ナンバーワン。援助職として、自分が平安の心を持っていないと、他の人にはシェアできないから。自分自身が本気で回復のプログラムをやっている必要があります。優先順位をしっかりと持って、それを忘れない、ということです。忙しい毎日の中で、それは必ずしも簡単なことではないけれど、自分の回復がナンバーワンだし、私とハイアーパワー(注3)の関係がナンバーワン。

2つ目は私の結婚生活を大切にすること。3つ目の優先順位は子どもたち。4つ目の優先順位はその他のすべて、一般。それさえおさえていれば、すべてうまくいくと思っています。回復の仲間たちがいっぱいいる。そういうフェローシップはとても大切です。自分が説教していることを自分できちんと実践できれば、そして祈りを続けることができれば、かなりいい線いける。
箱 崎 : 続けるコツを教えてもらえませんか? 忙しいことを言い訳にして、セルフケアをときどき怠ってしまうことがあるので(笑)
スコット: 2つあります。1つ目は、それほどパワフルではない方です。それは、普通の生活ができることです。友だちがいて、家族がいて、奥さんがいて、ということはすごくいいことです。普通の生活ができる、ということは、非常にすごいことです。非常にアブノーマルな家庭で育った人にとっては、これはすごいことだと思います。それだけではないです。

もう1つあります。自分にとって一番パワフルなこと、それは、AAの創始者の一人のドクターボブが言ったことです。「天国に行く唯一の方法は、地獄から足を遠ざけることだろう」。私の仲間で、長い期間、飲まずにいられたのに、突然また飲んで死んでしまった人がたくさんいます。何回も葬式に行きました。

優先順位を間違えて、だんだんミーティングから足が遠ざかって、その中で、クライアントたちと倫理的問題を起こして、開業できなくなったり、燃え尽きてうつになってしまったとか。そういうふうには自分はなりたくないです。地獄からなるべく遠ざかる、ということが、私にとっていいアプローチだと思っています。
箱 崎 : なるほど。私も地獄に近づかないように気をつけます。
スコット: 私はクライアントにとっていいセラピストでいたいし、70歳になっても、クライアントを持っていたい。そのために、地獄に近づかない、ということ。要するに、否認に陥らないということかな。
箱 崎 : スコットさんは、今は、児童福祉の現場を離れていると聞きました。それもご自分のセルフケアを優先にされたからですか?
スコット : はい、そうです。子ども虐待の問題をやっていると、死ぬ人がたくさんいる。こういうことがなぜ起こるのか、ということを毎日見る。子ども虐待というのはあってはならないことです。これは本当に残虐なことで、私たちではなくて兵士が見るべき状況です。

私自身、子ども虐待の問題をずっとやってきて、とても耐えられないので、老人の保護のための仕事に変わりました。それはセルフケアの一部だと思っています。今は落ち着いた気分になってきました。また、子ども虐待の畑に戻るかもしれない(笑)。あなたもそうだと思うけれど、許せないから。児童保護局を辞めたときに、自分は失敗したのではないかと思ったこともあったけど、そうではないと今は思える。小さい人間が、ゴジラと戦うような感じだから。あなたも自分のケアを忘れないようにね。
箱 崎 : はい。今日はお疲れのところ、本当にありがとうございました。またお会いできる日を楽しみにしています。(了)
(注1) アサーティブ 
自分と相手を尊重しながら、自分の意見や気持ちを素直に表現するコミュニケーションの方法
(注2) Alcoholics Anonymous=アルコホーリクス・アノニマスの略
無名のアルコール依存症者の自助グループ
(注3)ハイアーパワー
特定の宗教を表すものではなく、人知を超えた力



→ スコット・ジョンソン氏プロフィール
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