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続き4・・・

 さて試しの行動である。さまざまな現象形態がある。ここでは、「抱っこ」されたいという甘えの欲求表出を例にとると、試しの行動において子どもは、いつまででも抱っこという状態を続けたがるのである。家庭養護促進協会の岩崎さんは「里母の70以内にいつもいる」というように把握する。

 具体的にいってみると、子どもは、受けとめられたその状況にいつまでもしがみついていようとするのだ。いつまでも里母の膝や胸や背中から降りようとしない。離そうとしても離れない。うるさがると泣き、強引に引き離そうとすると、その場でおしっこジャー、うんちぽとん・・・。始末におえない、手におえない。いったいいつになったら子どもに充足感が訪れるのか、この子をほんとうに自分の子と思える時期がくるのだろうか。絶望的な気分におとしいれられるのである。

 イノセンスの表出は受けとめられても、なかなか解体しない。それどころか里母には永遠に解体が訪れてこないのではないかとさえ思えてくる、それほどの強度で子どもはイノセンスを表出し続けるのだ。*子どもの非行、不登校という事態に直面した場合など、それまでの親子関係は崩れる。そして崩壊とともに親子関係の再構築・結びなおしということがしばしば起きる。つまり〈親子になる〉というプロセスを経験することになる。このような事象は、いま問おうとしていることと少し問題領域がずれるので、ここでは触れない。(第4回目 了)

**幼児はふわふわの動物のぬいぐるみを抱いて寝たり、ぬいぐるみと枕を並べて寝る。この場合、ぬいぐるみは受けとめ手であり、それゆえそのふわふわ感において母親のおっぱいである。受けとめ手が子どものイノセンスの表出を受けとめる際、どこで受けとめるかというと、おっぱいで受けとめるのである。

***「スポック博士の育児書」に早く添い寝から解放されるには、赤ちゃんが泣いてもベッドに近づかないことだと書いてあった。最初は一時間泣いてもしだいに短くなり、一週間もすれば泣かなくなるというのだ。長女のときに実践してみて、ウソだということがはっきりわかった。それだけでなく、長女を暗所恐怖にしてしまった。存在の基底に不安を植えつけてしまったのである。残酷なことをしたといまでも胸が痛む。



 
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