・・続き2
〈再生する3つの家族〉
アリス・ベーカーと彼女の5人の子どもたちを、私はオレンジリボンネットへの連載第1回目と2回目に登場させた。2005年、アリスの子どもたちは全員、深刻なネグレクトが原因で里親に措置された。長女のマディソン(12歳)と次女のタミー(9歳)は母親のもとにもどされたが、行動障害などをかかえた年下の3人の子どもたちは親元にもどることはなく、裁判によって養子縁組が決まっていた。
2008年の夏、アリスは結婚する。新しい夫は、アリスとこのふたりの女の子たちとの生活になじもう、子育てにも参加しよう、と奮闘した。だが、長女のマディソンは小学6年生の2学期目から無断欠席が続き、思春期を目の前にした多感な子どもの反抗的な行動が目立ち始めた。私がマディソンの学校の会議に出席すると、そこには出産を間近にした母親のアリスの困惑した姿があった。長女の感情の変化をうまく受け止められないアリスとマディソンのファミリー・セラピーが始まった。
アリスと新しい夫の間に女の赤ちゃんが誕生したのは10月に入った最初の日曜日だった。病院から帰った母子をむかえ入れるようにして待っていたのは家族の面々だけではなく、*ホームビルダーズのセラピストだった。セラピストは毎日数時間ずつ家庭訪問して、知能障害のある母親の子育てを指導し、家族の日常のすべてが安全な環境の中に進んで行くよう手助けした。この家族の法廷介入を防ぐための児童保護局の最後の努力だった。
11月の第3土曜日は全米アダプション・デーだ。その日、全米で4000人の里子たちが養子縁組され、全国各地で記念の行事が開催されていた。アリスの年少の3人の子どもたち、サマンサ(7歳)、ジャック(6歳)そしてアンソニー(4歳)はふたつの家族に分かれて養子縁組された。法廷でのアダプション・セレモニーに里親ともども参加した様子を、アダプション課のソーシャルワーカーが式典の写真を持って私に伝えに来た。
3年半に及んで児童保護局の介入とサービスを受け続けたこのケースはようやく終了した。アリスには自分からすすんで教会などのリソースを利用するという“強さ”があった。マディソンの学校の先生も、アリスの家族と一緒に地域の行事に参加していた。
“この家族は、この先もコミュニティーの見守る中で安全を保っていけるだろう”という確信がケース終了をみちびいた。
ナディアと彼女のふたりの男の子のことを、連載第2回目に紹介した。少女時代に性暴力を受け続けたナディアは、精神障害にさいなまれながら成長し、トミーとブラッドレーというふたりの男の子をもうける。トミーは母親ナディアのネグレクトがもとで、祖母のもとに引取られた。トミーが5歳の時、ナディアはブラッドレーを生み、数ヶ月間はひとりでこの子を育てていた。
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