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第六回目のテーマは「生きていくための術」
教育ジャーナリストの青木 悦さんとの対話。
   
・・続き6(第四回)
24時間子どもを愛せという強迫観念
箱 崎 : 待ち遠しいです。そういうことに悩んでいる人がとても多いっていうことですよね。
青 木: 多いです。多いですよ。子どもを好きになれない母親はいっぱいいる。それは、子どもを24時間好きでなきゃいけないっていう強迫観念からきていると思います。子どもをいつも愛しているお母さんなんてあり得ないですもん。これは偶像ですよ。

まさに絵に描いた聖母マリアね。ところが、悩んで訴えてくるお母さんたちは、1日の時間の中でこの時間だけ子どもにいらつく、ということを子どもをかわいがれないってとらえるんですよ。毎日毎日、24時間すべて我が子を愛しているなんて、私はあり得ないと思います。
箱 崎 : ああ、そうですね。
青 木: もう私なんて、子どもが思春期以降になったら、大半が憎らしいばっかりで(笑)、かわいかったのはちっちゃいときだけ。ちっちゃいときはかわいいですよ、何だかんだ言ったって。ところが、だんだん自己主張し始めると、親子ってもともと自分の意思で選んだ相手じゃないじゃないから、価値観全然違うわけだから、すごくぶつかるんですよ。これが夫婦だったら、友だちだったら、自分の意思で選んだ人だから了解できますよね。趣味は最低でも一致しているし。
ところが、我が子になると、すべてが違うわけだから、ぶつかって当たり前なんだけど、ぶつかってはいけないんじゃないかっていう強迫観念があるんですよね。
箱 崎: そうですね。子どもと向き合えない親がすごく多いです。何かこう、「えっ、そんな話もできないの?」っていう。それを避けてどうするのみたいな。
青 木: そう、そのとおりです。それで、「子どもと嫌な関係になりたくない」って言うんですよ。またこれはわけの分からない言葉でね、「じゃあずっといい関係でいるっていうわけ?」って。「いい関係ってどんな関係?」って言ったら、不機嫌な関係で、その時間を共有したくないっていうだけなんです。
要するに、人生をうまく仲良くいくなんていう大きな問題じゃなくて、その日一緒にご飯食べるときに、お互いが黙っちゃって物も言わないで、つんけんしながら食べるのが嫌っていうだけなの。そんなこと避けて人と一緒に暮らせる?そんなこと日常あるじゃない、どうしたって。
箱 崎: そうですよね、ケンカしたら、お互いムッとして、1日、2日ぐらいは、口をろくにきかないとかありますよね。
青 木: そうですよ。私たち夫婦も仲いいように言われるんですよ。私の講演会があるときには、いつも一緒に行くのでね。私、飛行機に乗れなくて、博多までも新幹線で行きますとね、「いつもご一緒でいいですね」って、人は言うんですよ(笑)。
でも、いいときばっかりじゃないでしょう? でもケンカしたまま新幹線に乗るしかないじゃないですか。そうすると、お互いに博多に着くまで黙っているんですよ。それでも私、向こうが買ってきてくれた弁当だけはちゃんと受け取って(笑)。

普段仲のいいときだったら、「ほら、あの山きれいじゃん」とか言ったら、「ふん、ふん」ってやるのに、それも知らん顔して、お互いそれぞれ悶々としながら行くでしょう。でも、それでじゃあ、博多の駅を降りてからお別れねっていうわけじゃなくてね。
ましてや親子なんて、子どもはまだ生きていく技術もないわけだから、そこのところは大人の方が我慢をして子どもと折り合いつけていくしかないじゃない。

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