第一回目のテーマは「アルコール依存症」 医師でアルコール依存症者の竹内達夫さんとの対話です。
   
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続き8・・・

竹 内 : 底が破れちゃうから、死んじゃうから。だから、家族なら、抱きしめたらいいと思う。ただ、家族には、スキルを持ってもらないといけないと思っています。ここは突き放したほうがいいか、ここは抱え込んだほうがいいかというのがあります。なんでもかんでも突き放すんだったら、別居したほうがいい。家族をやめればいい。私共は、アルコール問題をやっていると、単身者のほうがやりやすい。家族のいない人のほうがやりやすい。家族に対して当座の恨みつらみがないから。家族がいて同居していて家族がやってくれないと恨みつらみになる。
箱 崎 : 私は父親がアルコール問題を抱えていて、何度も母が離婚しようとしたのですが、福祉事務所の職員から「離婚したら、ご主人は死にますよ」といわれて、母としては、そういう風に言われて、結局離婚に踏み切れなかったと話しています。でもAAの存在すら知らず、父への治療は進まず、その後もひどい状態が続くわけです。そうすると、私もそうですが、そこにいる子どもの安全はどうなるのかなと、子どものほうが死んでしまうかもしれない。そう思うときに、家族がどこまでやるのがいいのかと。夫婦だけならまだいいというか、実際に依存症にさらされた子どもが死んでしまうこともあるわけで、家族のあり方の難しさをすごく感じます。
竹 内 : そうですね。アルコール問題を抱えた家族とともに暮らすなら、自助グループに通いながら、一緒に暮らすというのならいいけれど、何もされていない中で暮らすのは危険なだけです。
箱 崎 : DVもそうですが、危険と感じたら、家族がそこから離れるということも必要かと思います。アルコホリックの人が、回復したいと思っているのか、そのことに気づいているのかと。
竹 内 : 気づいてないですね。認知障害がありますからね。家族でいろいろ問題があると思いますが、家族機能としては、2つあると思う。心の絆、あるいは感情の絆。親子は他人と違うでしょ。理論理屈ではないでしょ。感情で結ばれていますよ。それともう1つとしては、道具の機能がある。助け合いです。具体的に、道具として大きいのはお金です。お金がなければ助け合いができない。道具機能というのは、助け合いでしょ。日常の中で、道具的な役割をしている。それをどうスムーズにやるかということが、助け合いとしての家族機能、教育の問題もある。だけど、それには感情が伴っているわけでしょ。物を取ってくれと言って、物を投げたら物はここにくる。道具としての役割は果たしている。でもそれで満足しますかね。
箱 崎 : いいえ、怒りますよね。
竹 内 : 家族というのはそういう感情の絆で結ばれる道具機能も大きいですよ。そういう助け合いがどうできるか、ということですよ。全然助けなければ、家族としての機能ができていない。機能不全ですよ。それは自助グループで学ばなくてはいけないと思う。人間関係の中で学ぶしかないと思う。それを教えてくれるところがないでしょ。
アルコール依存症は遺伝病
箱 崎 : 特に依存症にさらされている子どもたちの自助グループが必要です。子どもたちにも感情を語れる安全な場が必要だと思います。日本にはまだアルコホリックの子どもの視点がないと思いますね。
竹 内 : アメリカには、アラティーングループがある。10代の子どもたちのグループがある。でも日本ではなかなか集まらない。だから、日本ではアルコール問題の資源がものすごく不足しています。どんどん死んでいくのは当り前ですよ。遺伝ですし、世代間で拡大再生産しています。
箱 崎 : 遺伝子なんですか?
竹 内 : はい。そういう遺伝子を持って、生まれてくるんです。アルコールの病気の発生しやすいような環境で生きると、発生します。
箱 崎 : 遺伝子がない人もいるんですか?
竹 内 : います。遺伝子のない人は病気になりにくい。アメリカでは、アルコール依存症を遺伝子疾患と言っています。でも日本では、遺伝子疾患とは言っていない。私は言っている。日本では、アルコールをやっている人は、遺伝関連疾患と言っています。確かにアルコールを発病させる遺伝子はまだ見つかっていない。けれども、関連遺伝子は複数見つかっているんです。だから、遺伝関連疾患ならいいでしょうと、私も控え目に言うことがあります。
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