第一回目のテーマは「アルコール依存症」 医師でアルコール依存症者の竹内達夫さんとの対話です。
   
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続き7・・・

グループの真ん中から言霊が生まれる

箱 崎 : 先生は以前、講演で、親密な人間関係に症状が出て、結婚すると悪くなる。親密な関係を求めているけれど、関係がうまく作れないと話されていましたね。
竹 内 : アルコール依存症の男性は、結婚した若い女性に母親を求めていますからね。そんな若い女性に母親役ができるわけがない。
箱 崎 : 私の母も、父親の母親役はできませんでした。
竹 内 : できませんよ。アルコール依存症者の全要求を受け入れることなんてできるわけがない。でも全要求を受けてもらわないと本人は困るわけですからね。
箱 崎 : どうすればいいんですか?
竹 内 : 結婚をしなければいい(笑)。夫婦の人間関係はより密接なので、歪みがあればよりはっきり 現れる。
箱 崎 : 受けとめられる体験が必要だと先生は話していますが、それはグループの中で、受けとめられるということですか?
竹 内 : 人関係になると、それぞれの場面で力関係が出てくる。夫婦でも。やっている問題が非常識な問題とか好ましくない状態だと、されている方は常識論で言いたくなる。そうすると2人関係だと説教になる。それは、アルコール問題で医療がさんざんやってきている。
箱 崎 : 医者と患者の力関係ですね。
竹 内 : そう。それでうまくいかなかった。世界中でね。AAができるまでは、うまくいかなかったわけです。AAを始めたビルだって医療から追い出されたわけでしょ、お前を救うのは神様しかいないって。伝統的な医療形態をやっている限りは、医療に名を借りた説教ですよ。私も医者だから、患者さんと1対1だとやっちゃうと思う。私の方が多少知識があって病気としての害も悪さも知っているから。脳の血管障害を含めてね。でも、そんなこと聞きたくないでしょ。
箱 崎 : 必要な知識だと思いますが、それと回復するということとは違うのですね。
竹 内 : グループという集団の車座から、その真ん中から言葉が、メッセージが出てこなくてはいけないんですよ。誰か1人がメッセージを発するのではなく、あの真ん中から出てくることが大切です。特定の人から出ると力関係になる。場合によっては主従関係になりますからね。
箱 崎 : 先日、先生が始められた、アルコール依存症者の家族のセルフヘルプグループ、「大川端集会」に参加したとき、先生が「言霊」という話をされていましたね。それぞれが自分の体験を語っていくなかで、アルコール依存症の成人した子ども抱きしめたという母親の話がありましたね。それも言霊だと思いました。私の心に深く響いてきました。そういうことがグループで起こるのですね。
竹 内 : 薬物依存症の民間リハビリ施設のダルクのメンバーが話したことも、まさに言霊でした。施設の前で、ボーと立ってたり、行ったり来たりしながら、いつまでもドアを叩けずにいて、ついに意を決して、ドアを叩いたら、茶髪の変なおっさんが出てきて、よく来たと言って抱きしめてくれた。そして、わかるわかると言ったと。きっとわかったんでしょう、自分で全部体験しているから。言霊ですよ。言霊というのは、こういう言葉を使えば言霊になるというのではなくてね。
箱 崎 : それが、スピリチュアルの病である、アルコール依存症を癒していくのですね。竹内先生は、アルコールの問題をスピリチュアルの問題として、日本で話されている、数少ない医師の1人だと思います。グループでは、自分の体験を話して、そこに自然に言霊が生まれて・・・。
竹 内 : だからね、ある意味でみんな、言霊を持っているんですよ。ハグだってやればいいじゃないですか。やったら、新たに違う展開が起きたりする。私は基本的に、アルコール依存症の人を突き放すのは反対なんです。突き放してうまくいかない例が多い。どの方法も万能はないですからね。突き放されたことで、自殺したりする。突き放すとしても心理的なステージがある。なんでもかんでも突き放すことがいいとは思わない。
箱 崎 : 孤立してしまうのでしょうね。
竹 内 : よく底つき論があって、どうも底つき論は二重底になっているのかなと。安全な底つきと、危険な底つきがあって、これが安全な底というならいいですよ。だけど底つくまで、あるいは底をつかせるとか、これは他力的じゃないですか。操作しているじゃないですか。だけど、底をつき抜けた人が多い。だから死んじゃう。それこそ、底までいって健康なほうにUターンできるのか、そういう保証があるのかといいたい。底までいったら、完全にUターンして完全に健康なところに戻ってくるんですか、そういう保証があるのですか、保証があるなら、それは安全な底じゃないかと。
箱 崎 : 先生はどういう底つきがいいと思っているんですか?自分から底つくけれども、底つきすぎないようにと。
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