箱 崎 : |
いじめの問題は、被害者も加害者もどうしても視野が狭くなってしまう。違う世界もある、ということに目が向けられず、そのことしかない。たった1人の世界に入ってしまう恐さがありますよね。 |
竹 内 : |
そうですね。子どもはね、虫の目ですものね。鳥の目にはなれない。家族関係をどう構築するかという問題もあると思う。鳥の目になれば、もう少し俯瞰で見れるけれど、虫の目です。だから、いじめはなくならないと思う。きれいごとでなくて、「殺すな」ともう少し介入しなくてはならないと思います。 |
箱 崎 : |
はい。一方で、いじめている子どもの中には、家で暴力を振るわれているとか、いじめを受けていたとか、どこかで暴力を学んでしまっている、ということもあります。たとえば、少年院に入っている子どもの多くが、虐待を受けていたことが調査結果で明らかになっています。どうしていじめてしまうのか、というところが抜け落ちてしまっている気がします。 |
竹 内 : |
自己防衛のために、いじめているのでしょうね。 |
箱 崎 : |
はい。だからいじめられていた子が、いじめる側になってしまったりする。 |
竹 内 : |
いじめは先制攻撃ですよね。暴力は世代で繰り返されているでしょ。親から暴力を受けているから、暴力を揮う。アルコール問題そのものも世代間連鎖でしょ。 |
箱 崎 : |
だから、アルコール問題と、暴力の問題というのは、すごくつながるんですよね。 |
竹 内 : |
家庭の中にモデルがないでしょ。他のモデルは見えないわけですからね。 |
箱 崎 : |
それこそ、子どもは虫の目ですから、自分の家庭しか見えない。 |
竹 内 : |
そう。 |
箱 崎 : |
先生は、なぜ医者を目指したのですか? |
竹 内 : |
母親が肺壊疽(はいえそ)で、もの心ついたときには、いつも咳き込んでいました。でも80過ぎまで生きました。医療との関わりの中で、医者は、ものすごく人の心を安心させたり、傷つけたりする、人の心を揺さぶるような非常に大きな力を持っている。そういう医学に対して、畏敬の念を感じました。 |
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