第1 回 第2回 第3回    
 
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・・続き4
  出生後も乳児のときの脳の発達はお母さんの接し方で非常に左右されます。今までアメリカでは「人間は遺伝の賜物か環境が作り出すものか?」というのが大きな研究のテーマでした。その結果2000年の初めまでは、「人間は遺伝と環境の作り出すもの」といわれてきました。ところがです。2006年に発表された研究では、お母さんの関わり方で、DNAまでも変えることができるということがわかってきました。

 ネズミの研究で、同じ母ネズミから生まれた子ネズミたちを二グループに分け、一グループには母ネズミに舐めたり、乳を含ませたり、おなかの下で温めて寝かせたりさせた結果、このグループの子ネズミたちはとても快活で、お互いに仲良く、環境に興味を持って探索するように育ちました。

 もうひとつのグループは、母ネズミが余り世話をしなかったので、子ネズミ達はオドオドして一寸のことでも恐ろしがり、いつもストレス状態でした。子ネズミ達の脳を解剖した結果、母ネズミから世話を余り受けなかった子ネズミ達の脳はシナプスの受容体を作る遺伝子が活性化しなかったために、受容体が少なく、あらゆる刺激が「不安と恐怖」反応を引き起こしているのでした。

 一方、母ネズミの念のいった世話は子ネズミたちの脳の受容体を作る遺伝子を活性化させて、沢山の受容体を作り出し、不安や恐怖を鎮める喜び、安心、興味など様々の反応を彼らに起こさせていることがわかりました。人間の研究でも、余り子育てに熱心でない母親は娘のエストロゲンホルモン(女性ホルモン)の受容体を作り出す遺伝子を黙らせてしまうので、この娘は成人してからやはり念の入った子育てができないということが分かってきました。

 これが「子育ての世襲」の理由のひとつです。(児童虐待の被害者として育った人が、自分の子どもに虐待するのは、トラウマの再演という症状で、これも「子育ての世襲」に関係します。これについては後に詳しく書きます。)
「抱かれなかった」お母さんが愛着の絆を、どのように結ぶかは次回にお話しましょう。

(第一回了)
 
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