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・・続き3
  その反対に、お母さんが堕胎や、生まれたら養子に出したいと考えたり、家庭内暴力で常時ストレス状態に置かれていたりすると、赤ちゃんも生まれる前から不安感を体験するのです。このようにお母さんと赤ちゃんは切っても切れない肉体の絆をもう胎児期から作り上げていて、これが愛着の絆の芽となるので、私たちが「愛着」の話をするときは先ず赤ちゃんとお母さんとの間に生まれる絆をさすのはこのためです。

 妊娠17週から25週目まで、移動した細胞が特殊化して各臓器を作って行く時期で、26週から39週目は特殊臓器発達期といわれ、出生に備えます。大脳新皮質の中では沢山の脳神経(ニューロン)が、お母さんの話し声や笑い声、心拍や血流の音などから刺激を受けて、軸が伸びて同じように反応しているニューロンと繋がりシナプスという連結部を作ります。たくさん出来た脳神経回路網が脳の各部分と連絡しあって、情報処理をするのですが、出生以前はこの回路網はまだちゃんと機能していなくて、生まれてからのお母さんやお父さんの関わり方で機能し始めるのです。

 さあ赤ちゃんの出生のときが来ました。「自分がおなかを痛めて産んだ子は可愛い」と私の母やその世代の人たちが言っていました。「無痛分娩」などと薬に頼らず、出来るだけ自然に、そしてお父さんになる人も分娩室に入って、お母さんを励ましつつ生むようにしてください。アメリカの研究で、赤ちゃんの父親(夫といわないのは、結婚していないときがあるので・・・)が妊娠を喜び、出産時に妊婦と協力していると、出産の時間が短く、痛みも少ないということです。サポートの大切さがよく分かりますね。生まれてくる赤ちゃんにとって、出生は最初のトラウマです。今まで完璧に守られていた静かな母親の胎内から、急に光と音の世界に押し出されるのですから。脳幹はもう機能しているので、赤ちゃんは痛みと空腹を訴えて大声を上げて泣きます。

 アメリカの産院では、生まれた赤ちゃんを即座にお母さんの胸に抱かせて、胎児として聞いていたお母さんの心臓の音を聞かせて安心させます。お母さんのほうも今まで痛かったのに、急に痛みが和らいで、ぴちぴちとした赤ちゃんが胸に来ると、とても感激して、「良く生まれてきたね」などと声掛けして、またその声が赤ちゃんの知っている声なので、安堵した赤ちゃんがスッと静かになります。

 それがまたひとしおの感激で、この瞬間が肉体の絆から母子二人の人間としての「愛着の絆」に変わるときなのです。ほとんどの産院では、医療スタッフは母子の安全を確認した上で退室して、家族だけで40分から1時間ほど赤ちゃんと「お知り合いになりましょう(Getting to know you!)」という時間をもたせて、愛着の絆を母子から家族全体に広げるようにしています。
この時間が後の児童虐待・放置の予防に大切な役割を果たしているので日本でも是非実行して欲しいと思います。

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