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〈親への取り組み〉
ワシントン州の虐待ケースを手短かに説明するとこんなふうになる。
虐待ホットラインのスタッフは、毎日入ってくるたくさんの通報の中から、緊急にソーシャルワーカーを出頭させるか、または3日以内の家庭訪問が適切かを判断する。
訪問調査を行うソーシャルワーカーは、危険度の高いケースと高くないケースを見わけ、危険がまったくないと判断されたケースはその場で終了する。 危険度が低くても児童保護局の監督がしばらく必要な場合は、家庭に自発的にサービスを受けるように薦める。
危険度が高く、子どもが危ない、とソーシャルワーカーが判断すると、警察の協力を借りて、子どもを親から分離する。親子分離には裁判所の合意が必要になるので、裁判が始まり、親にも弁護士が与えられる。子どもたちには、彼らの権利を守るメ擁護者モが与えられる。
1997年、児童福祉についての連邦法が変わり、実親が子どもを12ヶ月以内にとりもどせないと、裁判所は子どもたちのために、養子縁組などの長期のプランを立て始める。子どもにとって最上のプランは、親元にもどることだ。そのゴールを達成するために、ソーシャルワーカーたちは、親たちに家族再統合に向かったプログラムを提供する。
麻薬更生のためのプログラム。ペアレンティング。DVのカウンセリングなどがそのプログラムの一例だ。
幼少時に虐待を受けて育った親たちは、臨床心理士から治療を受ける。子どもを里親や親族に養育してもらっているあいだに、実親たちは、自らの過去、PTSDや鬱症にセラピーをとうして初めて立ち向かうことができる。
何とか期間内に子どもたちを取り戻すことができるように、親を叱咤激励する。親から子どもを奪っておきながら、親を助ける役目をするソーシャルワーカーの仕事には矛盾がある、と唱える学者や専門家もいる。たしかに、このふたつのまったく違った役目をこなし、親から信頼を得ることはなみたいていのことではない。
ソーシャルワーカーのほかに親の支援を勤めるのは、彼らの弁護士、麻薬更生やDVのプログラムのカウンセラーや、ペアレンティングのコーチだ。
児童保護局は多額の資金と労力を費やして親をサポートするわけだが、連邦法が定める12ヶ月の期限は、受刑中の親、麻薬更生の治療を受けている親にとっては、非現実的なゴールだろう。親たちは、子どもと離れて暮らすことで、彼らとの絆をそぎ取られていく不安に陥る。
ソーシャルワーカーは子どもと親との絆を継続し、深めるために、かれらの週ごとの訪問(ヴィジテーション)を徹底しなければならない。子どもの安全や措置先などについて話し合う場合は、必ず親たちを家族会議*(ファミリー・ティーム・デシジョン・メーキング)に招く。子どもがいったん親元にもどった後も、在宅サービスなどを使って、さらに支援を続ける。ワシントン州では、67%の子どもたちが親や後見人のもとにもどってゆく。
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