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・・・続き9

 アメリカの児童福祉の世界では、親族は家族の「延長」だから、実親の次に、その子どもについてのエキスパートだ、という考え方をする。私が勤務するワシントン州の児童保護局のソーシャルワーカーたちも、子どもたちが実親とともに生活できない場合、できる限り親類のもとに措置する努力をするように、そして、親族を家族会議に招くように、訓練されている。州法にも、ライセンスを受けた里親ではなくて、親族を優先することが義務付けられている。

 この10年ぐらいで、米国のキンシップ・ケアに関する研究が進んだ。その結果、親族里親のメリットは数多くあることがわかってきた。まず、親族に引きとられる子どもたちは、ライセンスを受けたフォスターペアレント(養育里親)に育てられている子どもたちに比べて、措置場所を変わる率が低く、また、きょうだいがばらばらになって暮らす率も低いという結果が出ている。親類のもとに措置される子どもたちの多くが、学校やコミュニティーを維持し、生まれ親しんだ文化や家族の伝統を守ることが可能だ。

 親族に育てられている里子の増加とともに、親族との養子縁組を図り、それが成就しない場合は、親族が子どもたちの後見人となる正式なガーディアンシップ(親族後見人)を成立させることによって、子どもたちに恒久的な家族環境を与えようとする動きが全米に広がった。そして2004年には、親族養育者支援法案(Kinship Caregiver Support Act)が連邦議会に提出された。この法案の目的は、親族のための助成金改善だけでなく、親族里親たちの情報交換を緊密にして、自助グループやカウンセリングなど、地域の社会資源を活用できるようにする「親族ナビゲーター・プログラム」を確立してゆくことにあった。

 ワシントン州も、この連邦法案を受けて数年前キンシップ・サポートの充実に乗り出したが、現時点では、親族里親に対する手当ては通常の里親の支給額のおよそ半分。トレーニングやレスパイトのような支援もほとんど確立されていないのが現状で、これからの課題は山積みだ。

<了>第4回へ続く


   
 
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