第三回目のテーマは、「ドメスティック・バイオレンス」DVコンサルタントで、DVサバイバーの中島幸子さん
との対話です。(パート1)
   
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続き5・・

箱 崎 : そのころ、大学ではどのようなことを学んでいたのですか?
中 島 : 大学では、法律と警察と保護観察の内容が一緒になっているような学部にいました。
箱 崎 : そこでは、DVについては学ぶ機会はなかったのですか?
中 島 : 学ぶ機会はあったと思いますが、その当時の私には自分にDVについての認識がありませんでした。
箱 崎 : 別れた後、カウンセリングに通ってDVだと気づいたのですか?
中 島 : カウンセリングに行くきっかけは、大学院の副校長の言葉でした。私は大学院を4ヶ月間、休学していて、復学するときに副校長に挨拶に行きました。そのときに、事情を説明したら、「私もそういう経験があります」と副校長が言ったのです。それを聞いたときに、目からウロコが落ちました。私以外にこういう経験をしている人がいるのだと初めて知って。

 それでいろいろ本で調べ始めたら、体験談とか私の体験とよく似ていて、DVという言葉を知りました。それでカウンセリングに通い始めたのです。
その副校長が「私もそういう経験があるし、カウンセリングがすごく役立ったからあなたもカウンセリングを受けたらどうですか」と言ってくれたのです。それで、カウンセリングに行くことにしたのです。
箱 崎 : カウンセリングにはどれくらい通ったのですか?
中 島 : 2年近く通いました。

DVは支配という関係性から起こる
箱 崎 : DVの定義については、日本では、配偶者間暴力と限定されていて、本当のところが伝わっていないように思います。

 『レジリエンス』が書かれた『傷ついたあなたへ わたしがわたしを大切にするということ DVトラウマからの回復ワークブック』(梨の木舎)には、「DVは親密な相手からの執拗なコントロールとしたほうが近いかもしれません。相手を支配し思い通りにコントロールするために加害者がとる手段が暴力なのです。
身体的暴力ではなく精神的暴力や経済的暴力を手段にして相手の体を傷つけずにコントロールする加害者も実はとても多いのです」とあります。
 中島さんは講演などで、特にDVの恐さについてはどのように伝えていますか?
中 島 : DVと虐待は、支配だと思います。Bさん(DVの加害者)は、☆(ほし)さん(DVのサバイバー)を自分よりも下と見下すわけですから、自分のパートナーであろうと、自分の子どもであろうと、なんでもありの世界に入れてしまう。その人たちに対して、怒鳴ってもいいし、無視してもいいし、物を投げたいときは投げてもいいという世界になってしまう。
その恐ろしいほどの力の差と、その差の中から生まれてくる支配という関係性からDVが起きるのだと思います。支配する側、支配される側の関係性です。支配される側が子どもだったら、抵抗する術もないかも知れないし、大人だったら、抵抗することに対しての恐怖感が植えつけられていると、抵抗できなくなってしまう。支配からはそうした状況が生まれるのです。

私が日本に来て、援助職の人たちに向けてワークショップを開いているのは、そういう意味があります。
箱 崎: そうするとそのような関係性の中で、逃げられなくなるのですね。よく暴力を受けたら逃げなさい、逃げればいいのにと思われてしまいますが、支配されると逃げられなくなるのですね。
中 島 : そう思います。「トラウマティック・ボンディング」という言葉があります。“トラウマが起きている関係性の中でできるつながり”という意味です。トラウマという経験をするところに加害者と被害者がいると、変な歪んだ関係性ができてしまい、歪んだつながりができてしまう。
 虐待されている子どもはすごく親の愛情を欲しがるでしょ?でもそれがテレビなどで報道されると、すごく変に映ってしまう。これだけ子どもは親を慕っているのだから、虐待なんか起きているはずないと。それは子どもだけではありません。

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