子ども達から、両親への感謝の気持ちを教わりました(3)
-虐待防止の情報「栄養面から診る虐待と暴力」-1-  
 ※・・続き3 元児童養護施設職員、里親
長浜 清江

施設にいても栄養バランスは乱れることもある

 かつて、児童養護施設で保育士をしながら、子どもたちの栄養面について考える機会がありました。子どもたちは、栄養士が栄養バランスを考えて作られる食事を食べているから、当然栄養面での過不足はないと、つい思ってしまうところですが、実態はそうでもないのです。
高齢児ともなれば、好き嫌いからメニューによってはほとんどを残し、自分のお小遣いで買ってきた菓子パン、お菓子、カップラーメン、即席ラーメン、ジュースという食生活になってしまう子もいます。容姿が気になり出すと、女の子は無理なダイエットが始まります。当然注意をするけれど、逆切れする子、頑なに意思を押し通す子がおり、難しい一面がありました。
そういった視点から子どもたちを見渡した時、園内で暴力的行為が顕著に目立ち、学校でも落ち着きがなく、常にトラブルが絶えなかった子は、全員が共通して「菓子類、ラーメン、ジュース」を多量に摂っていた児童でした。警察沙汰にもなり、残念ながら園にいられなくなった子もいました。食生活と子どもたちの精神面が、密接に関係していることを実感しました。

食生活は甘いものと糖質に偏りがち
 家庭にいた時、はたして子どもたちはどんな食生活を送っていたのでしょうか。食事に気をつけていた家庭は少なかったように思われます。3度の食事を摂れなかった子、カップラーメンを兄弟で分け合っていた子、お菓子を与えられていた子、かなりハチャメチャな食生活を送っていた子が多いように思われました。親御さん自身が、食事は「空腹を満たせば良い」という考えだった場合、当然栄養バランスは考えもしないだろうし、また、親御さんに精神疾患があれば、当然食事作りも困難です。

そんな親御さんたちの食生活は、どうなのでしょうか。子どもたちに聞くと、菓子パン、ラーメン、おにぎり、コンビニのお弁当、ジュース、アルコールの多量・・・甘いものや糖質に偏りがちのようでしだ。そういった食生活と、虐待、暴力。つい精神面ばかりが先行しがちな児童虐待ですが、偏った食生活もセットになっていることが伺えました。

低血糖症を疑ってみる
 低血糖症とは、聞きなれない言葉だろうと思います。血糖調整異常というほうがわかりやすいかもしれません。新しい記憶では、芸能人の泰葉さんが記者会見で「低血糖症だから」と言って黒糖を片手に会見に臨まれていたことがありました。
 通常、私たちは食事をすると、血糖値が上昇します。緩やかな血糖曲線を描き、また普通の状態に戻ります。これは膵臓が調節をしており、血糖値を正常に保つようになっています。しかし、血糖値が上がりやすい甘いもの、糖質を多量に摂取することが続くと、膵臓機能が弱まってきます。そうすると、甘いものや糖質の摂取で、急激に血糖を上昇させます。インスリンが出て、血糖を下げるのですが、その時にインスリンが大量に出すぎてしまい、急激に血糖値が下降してしまうのです。本来は、一定の数値内に収まる血糖値が、通常よりも下がりすぎてしまうという結果が生まれます。血糖値が急激に下がることは命の危険と体が判断し、アドレナリン、グルカゴン、成長ホルモン、コルチゾールといったホルモンが分泌され、再び、それも急激に血糖値が上昇します。

この急激に、というのが良くないのです。アドレナリンは「攻撃ホルモン」とも呼ばれています。人によっては「イライラする、キレる」といった精神症状が現れます。内向的な性格の方だと、「自殺したい」という願望が湧いてくることもあるようです。
子どもは両親の間から生まれてきますが、親とは全く別の、ひとつの人格を持っています。言うことを聞かない子ども、泣きやまない子どもに、親はイライラを募らせますが、通常は理性で抑えることができます。でも、血糖値が急激に上昇している時は、そうした理性が働かずにキレる、殴る、怒鳴るといった状態になってしまうようです。

コンビニ、スーパーで欲しいものが気軽に手に入る便利な時代になりました。甘い物の消費量と、家庭内暴力、校内暴力などの件数が比例するというデータもあるように、暴力との関係はあるように思われます。
(続き・長浜さんの虐待防止の情報:P4→

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