愛着の絆は何歳になっても作り直せる (3)
東京福祉大学名誉教授、社会福祉学博士 
ヘネシー澄子  
  
  子どもの不安感というのは、説明してもらえないことで生じることをこのときの体験から学びました。説明してもらえていれば妹が危ないということに不安はあるかもしれないけれど、「なぜ?」という不安はないわけですからね。祖父母は家のすぐ近くに住んでいたので、家族に会いにすぐ行くことはできたけれど、どうして私が祖父母の家にいるのか、その理由がわからなかった。

  妹はたった1日か2日で亡くなったのだけれど、祖父母宅に預けられている私にとってはすごく長く感じられました。それが生まれてから一番最初の嫌な思い出です。
このときの経験から、子どもが安心できるよう、本当のことを子どもに話すことの大切さを里親さんたちに伝えているのです。

  妹が亡くなったとき、父も母も家族すべてがとても悲しみました。私も悲しかった。けれど、「なぜ亡くなったのか」がわかりませんでした。母たちにもわからなかったみたいです。私とピーナッツを食べていたら妹が少し変になってしまって・・・。今考えるとピーナッツのアレルギーだったのだと思います。そういう人は実は多くて、今でもピーナッツが原因で亡くなる方が多くて、飛行機の中では、ピーナッツは出しません。でも、その当時はそのことがまだわからなかったのです。

―――その後、誕生された妹さんとお母さんとの関係について、以前講演でお話された内容がとても心に残っています。聴かせていただけますか?

  最初の妹が、亡くなったとき、母は妊娠中でした。だから2番目の妹はその生まれ変わりと思い、母はとてもかわいがって育てていると思っていました。でもそうではなかったのです。妹が亡くなった深い哀しみの中で、次の妹が生まれてきたために、100%の愛情は注げませんでした。そのことを、母は亡くなる2時間前に、初めて私に語ったのです。

 確かに、母と妹は、関係があまりよくなくて、母と私、母と弟との愛着関係とは、異なっていました。私はそのころ、愛着についての勉強をし始めているところだったので、母は最初の妹が亡くなったためにウツになり、いい愛着関係が、妹とは作れなかったのだと思いました。
 けれど、母の最期を看取ったのは、妹です。母は妹の胸のなかで息を引き取りました。そのことを妹自身、誇りに感じています。母も妹に感謝していると思います。病気の母を家で介護するなかで、母と妹は、愛着の絆を作り直すことができたのです。
 愛着の絆は、何歳になっても、作り直すことができるのです。(了)(次へ続く→4へ

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