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・・・続き6

〈ソーシャルワーカーの仕事は、常に誰かに見られている〉

 米国では、ソーシャルワーカーの仕事ぶりが、たくさんの人や機関に凝視されている。そのことは、日本の児童福祉の現場と、大きく違っている点かもしれない。 まず、事務所内の上司たちからの監督の域を一歩出ると、実親やティーンのクライアントや里親など、直接ケースにかかわる人たちが、常にソーシャルワーカーのすることを見ている。自分らが「受けるべきサービスや態度を担当のワーカーから受けていない」と感じれば、オンブズマンのような団体に自由に通報し苦情を申し立てることができる。

 裁判所に持ち出されるケースに関しては、ソーシャルワーカーに求められている仕事の量と、監視の目が倍増する。まず、実親たちのために選ばれた弁護人たちは、子どもを奪われた親たちにソーシャルワーカーが法廷で決められたことをしっかりサービスとして与えているかどうか、事細かに調査する。13歳以上の子どもたちには弁護人、そして、年少の子どもたちには、CASA*という権利擁護に携わるボランティアが任命される。

 このCASAも、子どもたちの措置場所や、彼らへのサービスだけでなく、ソーシャルワーカーが子どもの面会などの義務を、果たしているかどうかを調べる。そして、最終的には判事も、ヒアリングのたびに、ソーシャルワーカーがケースの任務を迅速に果たしているかを判断する。 こんなにたくさんの人や組織からの辛辣な目の中にあって、なぜ、たくさんの児童福祉ソーシャルワーカーはこの仕事をやめないのか・・・。それはおそらく、この仕事の、限りの無い幅の広さと、奥の深さのためだと思う。私は、多くの機関からの自分の仕事に対する監視や批判を、“試練モだと感じてきた。その試練が有ったために、いま、クライアントひとりひとりと向き合い、信頼を得るスキルを得たのだ、と思っている。

 私が現在、勤めている児童保護局はシアトルでもたった一つ、ネイティブアメリカンの子どもたちだけを受け入れる、専門のオフィスだ。都会のインディアンの家族の想像を絶するような貧困や、薬物中毒や暴力の現実と向き合うと時、今でも、困惑の中に一瞬立ち止まっている自分を見ることがある。 でも、クライアントも私も、孤立しているわけではない。家族を見守る親戚や部族の人たち、あらゆるサービスを提供するコミュニティーパートナーとの提携が我々ソーシャルワーカーの仕事だからだ。  

<了>第5回へ続く

オレンジリボンネットのシリーズ〈2〉は、あと2回で終了です。
次回は、実親や子どもたちへのサービスの内容を新しい情報を取り混ぜて報告します。そして、最終回は、私がネイティブ・アメリカンの人たちから学んだ大切なメッセージをお伝えします。


*CASA・・・ Court Appointed Special Advocateの略。児童保護裁判所で認定され、 訓練を受けたボランティア。里子たちのニーズと権利向上に目をむけ、法廷ヒアリングにも出廷して、担当する児童に関する自らの観測と意見を述べる。子どもたちの応援役であり擁護者である。
 





   
 
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