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箱 崎: 映画が公開されるまでに、6年かかったのは、このシーンを使うことを家族がなかなか許可してくれなかったそうですね。
小 野: 兄には3、4回話して納得してもらいました。
「社会的な立場をどうするか」も考えましたが、兄がしたことを認め、その責任のとり方が、映画の公開を許可することでした。作品の完成から公開までに6年の歳月がかかったのは、姉の強い反対があったからでした。家族の恥ずかしい部分を人に晒すのはおかしい、と駅前で大喧嘩をしました。会うと喧嘩になるから、電話で、相手の話しを聴く、という姿勢をとって、ようやく「あなたの好きにしたらいい」と言ってもらえました。
箱 崎: 小林さんは、ご自分の被害経験を公表することに対して、家族とどのような葛藤がありましたか?
小 林: 本を出したのは、出版することが決まってから書いたのではなくて、自分に起きたことを整理したくて、ずっと書き溜めたものに対して出版の話が出ました。出版に際して母は「恥ずかしいからやめて」と言い、父は「おまえが生きにくくなるのではないか、犯人が怒鳴り込みにくるかもしれない」と言いました。それでも出版することにしました。でも本が出る前日になって、怖くなってしまいました。その時、「あなたのことは全力で守るから」と最後に背中を押してくれたのは母でした。それまでの7年間のいろいろなやり取りの末のことでした。

さやかさんには、家族に愛されていて、でも言い合ってやりあって表現して得たもの、打破しようとしているリアルなところがある。そこから、いろいろな答えを導き出してくれると思います。
小 野: 小林さんは、すごく受け止めていく力、引き受けていく力があると思います。それを人のために使ってくれている。私は、まだ男性不信を引きずっているし、これからも抱えて生きていくのかなと思っています。
小 林: ほんと、さやかはすごいよ。皆さんもそう思いませんか?さやかに拍手をお願いします。
<会場から拍手が沸き起こる>
箱 崎: 残念ながら、時間がなくなってきました。最後に、自分の経験を伝えるということが、ご自身にとってどういう意味をもつのか、それぞれ、ひと言ずつお願いできますか?
小 林: 伝えるというのは楽なことではないですね。本当は、レイプとかそんな言葉口にしたくない。でも、理解してほしい、同じ思いをしている人に会いたいという思いから、いやでも使うしかない。言葉はツールで、伝えることの結果で、それによって共感を得たりすることができる。

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