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第四回目のテーマは、「エモーショナル・リテラシー」
薬物依存症の回復者で治療共同体のアミティの創設者のナヤ・ア−ビターさんとの対話です。
   
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さまざまな感情を育む


箱 崎 : 『ライファーズ』では、受刑者同士が、お互いのいいところを言い合ったり、互いの手を読むというエクササイズをしている場面が多くありますね。手を通して相手の感情を読みあうなど、心が温かくなるようなものが紹介されていましたね。それを見て、アミティでは、ネガティブな感情にだけ取り組んでいるのではないことを知りました。
ナ ヤ:

「怒りのコントロール」のようなプログラムはDV関係で多く見られます。これは私の個人的な考え方ですが、怒りにばかり目を向けてしまったり、キレて殴ったとか、その体験だけを見ていても怒りを抱えている人は、他の比べる感情がわからないと思いますね。あまりにも怒りにしがみついていることは、逆に解決になっていかないのではないかと思います。怒り以外のユーモアとか、違う要素を見出して、その人自身が育んでいけるようにしないと、怒りをいくら管理し、コントロールしようとしても、あまり効果はないのではないかと思います。
   
自分が持っている怒りとは、どういう怒りなのか、怒りの種類、たとえばキレルというのは、違う言葉で表現できる。たとえば「ムカつく」という言葉なのか、「イライラする」するという言葉なのか。ときには「哀しい」という言葉にもなりうる。怒りというとき、その言葉は何を意味しているのかということを、自分で理解するためにも、怒り以外の他の感情が必要です。

箱 崎 : 怒りの感情を理解して表現するためには、他の感情が助けになるということですね。
ナ ヤ: そうです。他の感情が見えない中で、怒りをコントロールしようとしても無理です。いろんな感情を育むことが大切です。たとえば、庭にいろんな花が咲いていて、花を感情だとすれば、いい種をまいていかないといけない。

たとえば虐待を受けたとか、ネガティブな体験をして、その感情だけにしがみついて生きると、ネガティブな木が育ってしまいます。それが加害者になってしまうわけですが、そのときに、愛情、ユーモア、忍耐力とか、共感とか、いろんなポジティブな感情の種をまわりに植えてあげる。

その人自身がポジティブな感情を体験していけば、怒りは残るだろうけど、ガーデンの中は怒りの木だけではない状態になります。いろんな感情の中に怒りもある、ということが自分でも気がつくし、ガーデンの状態もそうなります。
箱 崎 : アミティでは共に生活しながら、互いに支えあい、日々それに取り組んでいるのですね。
ナ ヤ: 学びの治療共同体であるアミティでは、ある一定期間、みんなが感情の幅を身につけて理解して育んでいく場です。たとえば子どものころ、自分は何に落胆したか、一番何が嬉しかったかとか、様々な体験をまず表現します。言葉や他の形で表現するのですが、表現して目の前にその体験を見える形で置いて、それがいろんな感情になっていく。しかも、その感情を自分はどこの時点で台無しにしたのか、ということとかも、体験を語ることによって見えてきます。自分でもその感情を評価できる。自分の成長具合や生きてきた過程の中で。

シンポジウム時のナヤ・アービターさん
(2004年9月)
箱 崎 : そのような互いを肯定的に認めあい、感情を読み合うことは、現在の日本の家庭や学校、職場にも必要なことだと思います。それが暴力を予防するし、人間関係の悪化を防ぐのではないかと。
ナ ヤ: 『ライファーズ』自体が、エモーショナル・リテラシーの映画です。受刑者同士がこの人のいいところはどこ?と尋ねたり、お互いの手を見て感情を読み合ったり、それら全部が練習になります。

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