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オレンジリボンネット管理人 箱崎幸恵 

 国内で初めて児童虐待防止法が制定されたのは、昭和8年だ。当時の法律の対象児童は14歳未満で、この旧児童虐待防止法には、虐待とはどのようなものか、定義が全く示されていない。その後、昭和22年に児童福祉法が制定されたため、旧児童虐待防止法は廃止となった。そして、児童虐待事件や、児童相談所に児童虐待の相談が増加していることが報道されるようになり、世論が児童虐待防止法の制定を要望し、2000年5月に「児童虐待の防止等に関する法律」(通称 児童虐待防止法)が制定され、同年11月に施行された。

 この法律は、衆議院の青少年問題特別委員会で議論され、超党派の議員立法を目指した。しかし、厚生省は新法制定に反対し、当時の児童家庭局長は、「児童福祉法など現行の法制度で十分に対応できる。法改正の必要もないし、新法も必要ない」と委員会で強行な姿勢を示した。当時の厚生大臣も官僚の姿勢に倣った。委員会では「しつけ」についても議論された、民法には「親権」として親の監護権や懲戒権を認める条文があり、虐待を「しつけ」と親が抵抗する根拠となっているため、委員会では民法改正の議論もあったが、法務省の「民法改正は必要ない」との意向が押しきられた。

 新法制定に向けて、参考人として呼ばれた児童相談所の職員やNPOの職員らが新たな法律が必要なことを現場の声として、国会で強く訴えた。さらに、メディアが児童虐待の事件や相談件数が増えていることなど連日報道し、市民グループが議員会館でシンポジウムを行うなどして新法制定を目指す国会議員を後押しし、世論の高まりを受けて、制定へと向かった。
そして、解散総選挙の風が吹き始めて、国会閉会の間際で、児童虐待防止法が制定された。この立法では、以下の第2条に「児童虐待の定義」が初めて定められた。

1. 児童の身体に外傷を生じ、又は生じる恐れのある暴行を加えること
2. 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をすること
3. 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置その他の保護者としての
  監護を著しく怠ること
4. 児童に著しい暴言又は、拒絶的な対応、著しい心理的外傷を与える言動を行うこと


 第3条は、「児童に対する虐待の禁止」、第4条は、「国や地方公共団体の責務」として、関係機関と民間団体は連携強化し、児童虐待の防止等のために必要な体制の整備に努めるようにと記した。第5条は「児童虐待の早期発見」、第6条は「児童虐待に係る通告」で、児童虐待を受けた児童を発見した者はすみやかに通告するようにと、児童虐待の通告は国民の義務とした。第9条「立ち入り調査等」、第10条「警察署長に対する援助要請等」では、警察の介入が明記され、児童虐待のおそれがある場合は、警察の協力を得られることとなった。第11条「児童虐待を行った保護者に対する指導等」では、保護者が児童福祉司等による指導を受けるよう義務づけた。                   
 また、第13条の「施設入所等の措置の解除」では、施設入所措置を解除する際には児童福祉司の意見を聞き、指導や勧告に従わないと措置解除しないとした。第14条の「親権の行使に関する配慮等」では、「児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して適切な行使に配慮しなければならない」とした。さらに施行後、3年以内に法改正を行うことが盛り込まれた。→(2)
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