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カウンセラー 熊谷珠美 |
■ 熊谷 珠美(くまがい たまみ)プロフィール 臨床心理士。日本の大学で心理学を学んだ後、米国でカウンセリング心理学修士号取得。米国で、重度情緒障害を持つ10代少女の入居治療施設カウンセラーとして性被害を受け妊娠した少女たちを担当したり、要保護児童のいる危機家庭支援のNPOでカウンセラーとして勤務。DVシェルターやレイプクライシスセンターでも相談員として支援に携わる。帰国後、都内自治体でDVなどの女性相談や、大学でのハラスメント相談に携わる。現在は、スクールカウンセラーとして勤務する傍ら、児童養護施設で思春期少女のグループや、母子自立支援施設でのDV被害を受けた母子の支援、性虐待やトラウマに関する執筆や翻訳、通訳、研修などもおこなっている。 |
相談や支援の仕事をしているみなさん。日々、話を丁寧に聴いたり、問題解決のために一緒に知恵を絞ったり、一人ひとりと真剣に向き合っていらっしゃると思います。きっとやることも山積みで、立ち止まってゆっくり考える時間も、同僚とじっくり話す時間もとれない日もあるかもしれません。日々の忙しい支援の仕事のなかで、判断に迷ったり、行き詰ったりしたときがあっても、すぐに相談できる機会もなく一人で抱えこむしかないことも多いかもしれません。 こんなときに役立つのが「スーパービジョン」ですが、職場や環境によってはすぐに受けることができないかもしれません。職場でスーパービジョンが受けられない、適当なスーパーバイザーがいない、スーパーバイザーに来てもらう予算がない、といった形でもし困っていらっしゃるなら、仲間同士でやる「ピア(仲間)・スーパービジョン」が役に立つかもしれません。今日は特に「SFRチーム」という形で行うピア・スーパービジョンについてご紹介したいと思います。 |
相談や支援の仕事をしていると、どうしても判断に迷うことや悩むときなどがあります。そんなとき、自分のやっている支援に第三者の目から助言などをもらったりすることをスーパービジョンといいます。一対一で助言をもらう個人スーパービジョンや、一人の助言者にグループで助言をもらうグループ・スーパービジョンという形が一般的です。助言者である「スーパーバイザー」がいないもうひとつのスーパービジョンの形があります。それは仲間同士がスーパーバイザーになり、助言しあう方法です。仲間のことを「ピア」と英語でいうので「ピア・スーパービジョン」と呼ばれたりします。 |
私がいた職場もスーパービジョンに対して理解をほとんどしてくれない所でした。とにかく当時の私は困っていて、職場がしてくれないなら「自分で探そう!」ということで探していた折、英国から来日されていたソリューションフォーカス(解決志向アプローチ)を実践される企業コンサルタントのマーク・マカーゴウ(Mark
McKergow)氏とジェニー・クラーク(Jenny Clarke)氏に、「SFRチーム」という手法を教えていただいたのです。 SFRチームとはSolution Focused Reflecting Team(ソリューション・フォーカス・リフレクティング・チーム)の略です。ソリューションフォーカス(解決志向)のアプローチとは、例えば困ったことが起こったとき、「問題は何だったのか?」と問題を究明するステップは飛ばして、直接解決策探しに向かいます。結果、早く解決に辿りつくため短期療法としても有名なアプローチです。 ソリューションフォーカスでスーパービジョンを行うときは、例えば次のような考え方で取り組んでいきます。 ● ケースの発表者には十分に能力があり、解決することができると見ます。 ● スーパーバイザーは、支援の中ですでにうまくできていることに焦点をあて、 それを継続し続けるように発表者をサポートします。 ● スーパーバイザーは、知恵を授けるというのではなく、知恵を引き出す役割です。 ● 発表者の考え方が違っても違いを尊重します。 ● 発表者の力をスーパーバイザーは信頼します。 SFRチームは、このソリューションフォーカスの視点に立ったグループのやりかたで、元々はイギリスのハリー・ノーマン(Harry Norman)がブリストル・ソリューションズグループ(Bristol Solutions Group)と作ったものです。臨床現場のスーパービジョンのモデルとして始まりましたが、ビジネスや学習の分野、チームづくり、問題解決、支援者のサポート(コーチ、心理療法士、カウンセラー、職業リハビリ)、研修など、様々な場面で使われています。 < 次ページへ > |
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