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男の子なら勇気がある子に育って欲しい。よく聞かれる言葉ですが、じゃあ女の子には勇気はいらないのでしょうか。いえいえ、女の子にも勇気が必要です。
なぜって、勇気とは、知らないもの、未知なものに立ち向かっていく力ですから。生きていく限り、結果が見えないものに飛び込んでいく、そんな決断をしなければいけない場面にしばしば遭遇します。
初めてプールで泳ぐ。見知らぬ町に出かける。初めてのレシピで料理する。予測し得ない、何が起るか分からない怖さを克服してアクションする、それが勇気です。
さらに、危機的な状況に立ったとき、決断を迫られたとき、自分の能力や、周囲の状況を見回し、石橋を叩いて、慎重にルートを見極める。場合によっては撤退する、あきらめる。それも勇気です。
痛いだろう、辛いかもしれない、そう分かっていてもあえてそこに踏み込んでいく、それも勇気です。注射を打つ、手術を受ける、失敗を認める、ミスを謝る。一般的な勇気のイメージでしょうか。
同時に、支配や暴力、自分を傷つけるものから逃げ出す。それも勇気です。決断するときに常に使う力、人が生きていく上で日々必要な力、それが勇気なのです。
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「三びきのやぎのがらがらどん」
マーシャ・ブラウン え せたていじ やく
福音館書店
3匹のやぎたちは、山に向かう途中の橋でトロルに出会います。小さいやぎは、トロルに「一呑みにしてやろう」といわれ、「僕を食べないで。あとからもっと大きなやぎが来るから」、そういって逃れていきます。圧倒的な力の前で、知恵を働かせ、しっかり主張して、その場を去る。なんて勇気ある行為でしょう。
幼い子どもたちは、この小さいやぎに自分を重ねて、怖いトロルから逃れたことにホッとします。そして、自分を怖がらせたトロルをこっぱみじんにする大きいやぎに喝采を送ります。後ろから来る大きいやぎへの信頼があるからこその勇気だともいえるでしょう。
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「おしいれのぼうけん」
古田足日 田端精一
さく 童心社
さくら保育園の怖いものは、押入とねずみばあさん。さとしとあきらは昼寝のときに騒いで、先生に押入に入れられてしまいました。怖い!と泣き出しそうなあきらに、さとしが上の段から「手を握ろう」。ねずみばあさんが出てきても、二人は助け合って逃げます。
怖いときでも仲間がいれば、互いに支え合える。くじけそうになっても、助け合える仲間がいれば勇気が出るんですね。
そんな仲間を、今の子どもたちは作れているでしょうか。そんな仲間関係を、大人たちは見せてやれているでしょうか。初版から35年経つ今でも、子どもたちはこの絵本が大好きです。
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