東京の三鷹駅から歩いてすぐのところに、絵本屋「プーの森」があります。店長の野村羊子さんは、絵本を通して、お母さんや子どもたちの心に寄り添ってきました。野村さんにお願いして、大人と子どもに向けて、毎月テーマにあった、お薦めの絵本や書籍を紹介してもらうことになりました。どれも手にとってみたくなります。一緒に絵本の扉を開けてみませんか?
今月のテーマ
「 すき 」
November-2007
 “すき”という気持ちはとても大切だけれど、普段は中々表現できないものです。特に家族であれば、好きなのは当然。わざわざ言葉にしなくてもとか、表現する必要もない、などとなっているのではないでしょうか。でもそれって、とってももったいないことです。好きという気持ちを思い出してみてください。本当にほっこりしてきませんか。それを言葉にすると、その暖かさが周囲に広がっていく、そんな気がします。
 欧米では、家族に好きと表現するのは当然のこと。他の人に家族を自慢したり、紹介するときにいいところを上げてほめながら紹介します。プラスの感情を表現するのはとても前向きで素敵な習慣ですよね。
100%好きでなくてもいいのです。人は色々な面を持っていますから、ここが好き、ここがあの人のいいところ、そういうところを見つけて、そこが好き、といってみてはいかがでしょうか。

「すきなの だあれ?」
文 マーティン・ワッデル 
絵 カミーラ・アッシュフォース 
訳 黒木瞳 小学館

 こねこのホリーは、お休みなさいの用意をしながら“おやすみなさいゲーム”をするのが大好きです。それは、ママがホリーに「すきなのだあれ?」と聞くゲームです。ホリーは、お風呂に入りながら「おじいちゃん、○○だから」「おばあちゃん、、、」と答えていきます。「すき」という気持ちをストレートに表すホリー。最後にはママに「ママもホリーが大好きよ」といって抱きしめてもらい、安心して眠りにつく姿が描かれています。
 みなさんも「すきなのだあれ」ゲームをしてみてください。5人、10人と交互に上げてみるのも楽しいですよ。ちゃんとホリーのように理由をつけて下さいね。

「うちにあかちゃんがうまれるの」
いとうえみこ・文 伊藤泰寛・写真 
ポプラ社

 6歳のまなかちゃんの語りです。お母さんの大きなおなかの中にいる赤ちゃんによびかけているまなかちゃんやおにいちゃんたち。自宅のお風呂で助産師に見守られての出産。生まれてきた小さな赤ちゃんをだっこするまなかちゃんやお兄ちゃん。カメラマンのお父さんが撮った写真から、あかちゃんが可愛いと家族が想いをよせている様子が伝わってきます。こんな出産、生まれ方もあるのだな、と幸せ感をお裾分けしてもらった感じのする絵本です。

「まおちゃんのうまれたひ」
神沢利子 さく 加藤チャコ え 
のら書店


 “空一杯に虹の出た日に、まおちゃんは生まれたの。”
自然の中で感じるいのちのいとおしさを、柔らかな詩で表現されています。生まれてきたことを言祝ぐ思い、それこそが“すき”ということなのでしょう。お子さんの名前にして読んであげてください。生まれてきてくれてよかった、ありがとう、と言ってもらえば、自己肯定感の基礎となっていきます。
 
「とんことり」
筒井頼子 さく 林明子 え 
福音館書店 

 かなえは、山の見える町に引っ越してきました。お父さんとお母さんが忙しく片付けをしていると、「とんことり」と小さな音。かなえが見に行くと郵便受けにすみれの花が入っていました。小さなプレゼントで気持ちを伝え、そっと近づきながら親しくなっていく様子を描いた絵本です、最後の見開きページは、二人のはじけるような笑顔で、見ていて幸せ感が伝わってきます。“すき”という気持ちを伝える方法はいろいろある、ということをも伝えてくれます。プレゼントしてくれた子は、最初の見開きページからちゃんと描き込まれています。どこにいるか探してみてくださいね。
「ナイトシミー 元気になる魔法」
絵 アンソニー・ブラウン 
文 グエン・ストラウス 訳 灰島かり 
平凡社

 エリックは口をきかない。秘密の友だちがいてかわりにしゃべってくれるから。でも、エリックをからかわないマーシャと遊んでから、ナイトシミーはいなくなってしまった。エリックの心象風景を見せているようなユニークなイラストです。エリックは、マーシャを助けようとして、声を出し、そしてふたりはしゃべりはじめました。思いをよせるから、言葉が出てくるのですね。
アンソニー・ブラウンは、心象風景を映し出すような、あるいはだまし絵のようなユニークなイラストの絵本を何冊も出しています。“気持ち”を描いた絵本がありますので、ついでに眺めてみてください。
「キツネ」
マーガレット・ワイルド/文 ロン・ブルックス/絵 寺岡襄/訳 BL出版

 山火事で羽根を傷めたカササギは、イヌの介抱も拒否してうずくまった。そのうち、走るイヌの背に乗って、カササギは飛ぶ感触を味わうようになった。そこにキツネがやってきた。完結していないラストを、あなたはどう感じましたか。
 大人向けの絵本です。信頼とねたみ、親密感と緊張感、など様々な感情や、言葉にならない思いを感じてさせてくれます。じっくり味わってみてください。希望に向かってやり直そうとする熱意、と私が感じたラスト、あなたならどう描きますか。

 
 
 

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