東京の三鷹駅から歩いてすぐのところに、絵本屋「プーの森」があります。店長の野村羊子さんは、絵本を通して、お母さんや子どもたちの心に寄り添ってきました。野村さんにお願いして、大人と子どもに向けて、毎月テーマにあった、お薦めの絵本や書籍を紹介してもらうことになりました。どれも手にとってみたくなります。一緒に絵本の扉を開けてみませんか?
今月のテーマ
「 泣く 」
October-2007
 感情を表現することは大切なことです。今の社会は、感情を出すことを禁じていて、私 たちは子どもの頃から、感情を出すことを止められてきました。それで、子どもたちにも我慢しろと言ってしまいます。だから、何度言っても言い足りないくらいなので、繰り返し言います。感情を出すことは大事なことです。

 特に、「泣く」事は、傷ついた心を癒してくれます。悲しみを和らげ、怒りや悔しさにふ るえる心を落ち着かせ、痛みを消してくれるのです。しっかり泣きたいだけ泣くと、人は次に一歩を踏み出せるものです。
 安心して「泣く」ことができれば、人はずいぶんと楽になります。子どもたちは本能的にそれを知っているから、自分の心の傷を癒すために泣くのでしょう。

6年生の女の子がいつも同じ本を読んでは泣いているので、お母さんは読まなければいいのにと思っていたそうです。実はその子は、学校で自分でも知らずに、必要以上に頑張っていたのです。本を読んで泣くことで、自分を癒そうとしていたのでしょう。なんとかしこいのでしょう。

 泣きたいときは、泣きましょう。以前ご紹介したパット・パルマーのシリーズ「泣こう」(径書房)も参考になると思います。
 でも、一人で泣くよりも、ただ黙って寄り添って泣かせてくれる人がいれば、自分を癒す作業がもっと楽にできます。そういうことが出来る場が、もっともっとあるといいなと思います。

「くうちゃんがないた」
みなみくうくう 
アリス館

 「くうちゃんが ないてるよ」。じわっと涙を流したかと思うと大泣きに泣いて、その後は笑ってる。あかちゃんの様子をやわらかいガラス絵で描いています。赤ちゃんが泣くことさえ許してくれないような空気の中で、こういう風におおらかに泣いている赤ちゃんと見ていられるといいなあと思います。

「ないた」
中川ひろたか・作 長新太・絵 
金の星社

 「ころんで ないた。」「しかられて ないた。」いろいろな泣いた場面が描かれています。どうしてぼくは泣くんだろう。大人はなんで泣かないんだろう。と考えていきます。どうしてでしょうね。
 
「泣いた赤おに」
浜田廣介・作 梶山俊夫・絵 
偕成社

 気の優しい赤鬼は、人間と友だちになりたいと思いますが、村人は怖がって近寄りません。そこへ青鬼がやってきてノ。
ラストシーンで泣いた、という人も多いのではないでしょうか。こういう自分の「泣く」ツボにはまる1冊を持っているのも、いいかもしれません。
「のっぽのサラ」
パトリシア・マクラクラン作 金原瑞人訳 
徳間書店

 開拓時代のアメリカ。パパの出した花嫁募集の広告を見て、海沿いのメイン州から、大草原へ1ヶ月のお試しでやってきたサラ。ママになってくれるかな。わたしたちのこと、好きになってくれるかな。海に帰っちゃったらどうしよう。姉の語りで語られる短いお話ですが、子どもたちの思い、語られないパパとサラの関係が、切々と伝わってくる物語です。サラがホームシックで涙するシーン、ケイレブが町から戻ったサラに抱きついて泣くシーンは特に胸を打ちます。小学校中・高学年以上大人までお勧めです。
「子育て 泣きたいときは泣いちゃおう!」
小野わこ 
学陽書房

 子どもが泣いたときは、いっしょにいてただ聴いてあげるだけでいい。安心して聴いてもらえる経験を通して、子どもは変わっていきます。親同士が、互いに時間を分け合って、話を聞き合う「親の時間」を8年間主宰してきた小野さん。その経験、そして自身の子育ての経験を通して、感情を出すことの大切さを語っています。

 
 
 

←戻る上へ↑
 
COPYRIGHT(C)2006 ORANGE RIBBON-NET & THE ANNE FUNDS PROJECT ALL RIGHTS RESERVED.