東京の三鷹駅から歩いてすぐのところに、絵本屋「プーの森」があります。店長の野村羊子さんは、絵本を通して、お母さんや子どもたちの心に寄り添ってきました。野村さんにお願いして、大人と子どもに向けて、毎月テーマにあった、お薦めの絵本や書籍を紹介してもらうことになりました。どれも手にとってみたくなります。一緒に絵本の扉を開けてみませんか?
今月のテーマ
「おいしい」
March-2009
 食べるって大事ですよね。「衣食足りて礼を知る」、ではないですが、基本的な欲求が満たされて初めて、人は周りを見る余裕が出来るものです。

 でも、栄養的に正しいからといって、量が足りているからといって、おいしいと思えるかとは別問題。とくに幼い子どもは、味よりも雰囲気の方が重要かもしれません。たった一人で食べるより、あるいは食べるかどうかをじっと見られているよりも、おいしそうに食べている人たちの中で食べる方がずっとおいしく感じるのではないでしょうか。

 おいしいと思った瞬間があるからこそ、絵本の中のおいしいお話も、おいしく読めるのですよね。

「くだもの」
平山和子 著
福音館書店

 すいか、りんご、柿、などの果物がまるごと描かれています。次のページには皮をむいてお皿に盛られ、「さあどうぞ」。とってもおいしそう。
 さあどうぞ、と子どもに渡すまねをすると、ちゃんと食べてくれます。まだ言葉のでない赤ちゃんにもさあどうぞと差し出すと、よだれが出てきたので、ちゃんとわかっているって嬉しくなりました。おいしいね、っていっしょに楽しんで下さい。

「わたしのおべんとう」
「ぼくのおべんとう」
スギヤマカナヨ 著
アリス館 

 2冊セットでみてください。表紙はチェックの包みのお弁当箱。
 開くと、「わたしのおべんとう」はサンドイッチにミートボールといちご。「ぼく」は唐揚げと卵焼きに海苔ごはん。 上から見たお弁当箱だけが描かれていきます。お弁当が食べられて行く様子を、ぼくや私のコメントだけで描いているだけなのですが、満腹感が味わえます。途中で二人はおかずを交換したり、おかあさんの工夫に驚いたりと、お弁当を食べるのが楽しくなる絵本です。

「おなべおなべ にえたかな?」
こいでやすこ 著  福音館書店

 おばあちゃんが出かける間、きつねのきっこたちはスープの番。「おなべおなべ煮えたかな?」「煮えたかどうだか食べてみよ」。味見を繰り返すうちにスープがなくなって・・・。
 にんじんスープが豆スープに変わってしまったけれど、おばあちゃんは春のスープに大満足。いつの間にかネズミやリスやもぐらに虫たちもお相伴。
 おいしいって幸せですね。
 
「よもぎだんご」
さとうわきこ 著  福音館書店

  きょうはよもぎだんごをつくろう」ばばばあちゃんは子どもたちとよもぎつみ。ついでにツクシやヨメナなどの野草も摘んできました。なずな、ヨメナはゴマ和えに、よもぎは、よもぎ団子。
 ちゃんと作り方の説明になっているので、読んだらきっと作りたくなります。いっしょに春の味を満喫しましょう。
「オオカミと石のスープ」
アナイス・ヴォージュラード 著 
平岡敦 訳 徳間書店

 寒い冬の晩、年老いたオオカミがめんどりの家にやってきました。暖炉にあたらせてくれたら石のスープを作るというのです。スープにはセロリよ、ネギも、カブも。様子を見に来た動物たちがそれぞれの好みの野菜をくわえて、おいしいスープが出来上がりました。
 「もっとみんなであつまって、ばんごはんをたべることにしましょうよ」そう言うめんどりをよそに、オオカミは石を袋に詰めてムッとしたまま出ていきました。
 フランスのユーモアあふれるお話です。
「まるごとおいしい幸福のつくりかた」
村中李衣 著  クレヨンハウス 

 大学の学生や、思春期の息子と娘、幼い子どもとふれあう日々。そんな暮らしの中の怒りや哀しみや愛すること、うれしいことの一こまに「プライドーナツ」「涙のカラマルソース」「アジな皿だ」といったレシピをつけた25のエッセイです。
 生きることをおいしく味わおうとする姿勢がステキ。
 
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