東京の三鷹駅から歩いてすぐのところに、絵本屋「プーの森」があります。店長の野村羊子さんは、絵本を通して、お母さんや子どもたちの心に寄り添ってきました。野村さんにお願いして、大人と子どもに向けて、毎月テーマにあった、お薦めの絵本や書籍を紹介してもらうことになりました。どれも手にとってみたくなります。一緒に絵本の扉を開けてみませんか?
今月のテーマ
「セルフ・エスティーム 自尊心」
February-2007
 自分が大事だと思うこと、それは人として生きていく上で本当に大事なことです。でも、ほんとに些細なことで、自分はいらないんだ、いてもいなくてもいい存在なんだと思わされてしまう、とてももろい部分でもあります。人は皆、ただ生きているそれだけで存在の価値があるのですが、今の社会はそう思わせてはくれません。だからこそ、私たちは、互いを認め合い、尊重し合うことで、互いを生かし合い続けることが必要なのではないでしょうか。
 あなたは、世界中二つとないユニークな存在です。あなたの中には、他の人にはない力があります。

「いいこってどんなこ?」
ジーン・モデシット 作 
ロビン・スポワート 訳 もき かずこ 訳  
冨山房 

  バニーはお母さんに尋ねます。「いいこってどんなこ?」泣かない子?恐がりじゃない子?かわいい子?お母さんは、そのたびにていねいに答えます。「泣いたっていいのよ」「恐いものがない人なんているかしら」。そう、バニーはバニーらしくするので充分「いい子」なんです。幼いときに、こういう風に認められていたら、自尊心を持つのも簡単なことのように思われます。今からでも遅くはありません。この絵本を読んであげて、子どもにも大人にも「今のあなたが大好きよ」と言ってあげられるといいなと思います。

「エレーナのセレナーデ」
キャンベル・ギースリン 文 
アナ・ファン 絵 
小島 希里 訳 
BL出版


  エレーナはメキシコの女の子。ガラス吹きの父さんに、「わたしもガラス吹きになりたい」と言ったら、「女の子はなれない」って。だから、男の子の格好をして一人でガラス吹きのいるモンテレイまででかけることにしました。途中で、ガラス吹きのさおを吹くと音が出て、曲が吹けるようになったエレーナ。モンテレイのガラス工房で、曲を奏でながらガラスを吹いてみると、星の形ができたのです。道々出会うロバやミチバシリやコヨーテなどにも励まされ、エレーナが夢を実現していく姿がテンポ良く描かれています。ピンクを基調にした絵もユニークで、暖かみがあります。自分を信じて行動する元気な女の子に励まされるお話です。
 
「すてきなよるに」
ヴォルフ・エァルブルッフ 文 
うえの ようこ 絵 
BL出版


  ヒキガエルにドブネズミ、コウモリとクモが口げんかしていると、ハイエナがやってきて、サクソホーンを吹き出しました。「人がどう思うかじゃなく、自分が何をするかだよ」その言葉に、それぞれ自分のできることを思い出しました。みんなを誘ったけれど誰も来ない。そこで自分たちで楽しむために音楽を奏でパンケーキを焼きました。するとみんなが集まってきて、楽しい夜となりました。誰だって、何かしらできることがあり、自分が楽しめれば、そこから広がるかもしれない。ティーン以上、大人に読んでほしい絵本です。
「たいせつなこと」
マーガレット・ワイズ・ブラウン 作 
レナード・ワイスガード 絵 
うちだややこ 訳
フレーベル館

 コオロギにとってたいせつなことは、黒いということ。スプーン、ひなぎく、りんご、かぜ、などなど、その特徴をあれこれ上げつつ、でもたいせつなのはと、繰り返し語られる。その最後におかれた言葉は、「あなたは あなた」。「あなたにとって たいせつなのは あなたが あなたである ということ」。じっくりと味わってください。
「子どもが育つ魔法の言葉」
ドロシー・ロー・ノルト レイチャル・ハリス
石井千春 訳 
PHP文庫


  「認めてあげれば、子どもは、自分が好きになる」。この言葉の内容を具体的な例で示しながら、あれこれとていねいに説明してくれます。この本全体に子どもを尊重すること、肯定すること、受けとめることの大切さが語られています。子どもだけではなく、大人同士の関係にもあてはめることができるかもしれません。こんなこととってもできない、と思う方もいるかもしれません。でも、こうありたいな、と思える姿を知ること、そこから始まるのではないでしょうか。認めてあげれば、愛してあげれば、子どもは子どもなりに愛を返してくれるものではないでしょうか。

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