東京の三鷹駅から歩いてすぐのところに、絵本屋「プーの森」があります。店長の野村羊子さんは、絵本を通して、お母さんや子どもたちの心に寄り添ってきました。野村さんにお願いして、もらうことになりました。どれも手にとってみたくなります。一緒に絵本の扉を開けてみませんか?
今月のテーマ
「信じる」
Januaryr-2010
 信じることは、空気のように当たり前のこと、と言い切れたらどんなにいいでしょうか。でも、そうは言い切れない様々な体験を私たちはしてきています。成長の過程で得た「傷」が、そのままを信じること、見えないものを信じることを、難しくさせているのです。

 現在は過去とは違うと分かっていても、努力して「信じる」ことを選ぶのは、困難が伴います。「不信」に打ち勝ち、「信じる」ことは大変勇気のいることだといえるでしょう。

 見えないものを信じる力、それは、未来へ希望を持つこと、理想を信じることでもあります。恐怖や邪な気持ちではなく、「いつかはきっと」という光を信じる心を育み、共有しあえる関係をつくっていきたいなあと思います。

「くじらの歌ごえ」
ダイアン・シェルダン/さく 
ゲイリー・ブライズ/え 
角野栄子/訳 BL出版

 リリーは、おばあさんからくじらの話を聞きました。贈り物をしたおばあちゃんに、お返しをしてくれたくじらの話です。おじさんは役に立たない話だと言いますが、リリーはくじらに贈り物をします。
 すると、月明かりの中、くじらは歌ってくれたのです。リリーの思いを十二分に表し、光を描き込んだ絵が印象的です。

「ミリーのすてきなぼうし」
きたむらさとし 作・絵 BL出版

 ミリーは帽子屋さんで見えないお金で見えない帽子を買いました。ミリーはとりどりの羽の帽子を想像してかぶり、ケーキの帽子、花の帽子と次々に帽子は形を変えていきます。すると、歩いている人がみんなそれぞれの帽子をかぶっていることに気がつきました。この場面は、それぞれがどんなことを考えながら歩いているかを見せてくれてとてもユニーク。最初の帽子屋さんと、ラストの両親とのやりとりも素敵。こんな風に「空想」にしっかりつきあってくれる大人は、本当に素敵です。
「ジェニー・エンジェル」
マーガレット・ワイルド 作 
アン・スパッドヴィラス 絵 もりうちすみこ 訳 岩崎書店社

 ジェニーは、病で床につく弟を守るエンジェル。羽を隠すためにおかあさんの古いコートを着続けている。でもついに、弟は亡くなってしまった。自分を守るため、弟を守るために、信じていたこと。それを否定せず見守り、でも真実を伝える母親。その場を生き延びるために必要な「信じる」こと。そして真実を受け入れるために必要な優しさ。深い愛情を感じさせてくれる絵本です。
 
「しあわせの石のスープ」
ジョン・J.ミュース さく 三木卓 やく 
フレーベル館

  3人の旅のお坊さんが山あいの村にきましたが誰も出てきません。互いに信じ合えなくなっていたのです。お坊さんたちは、広場で湯を沸かし、石のスープを作り出した。女の子が見に来て、、、。ついに村人が持ち寄った様々な材料でコクのある美味しいスープができあがりました。東欧の民話を中国に移して描かれた絵本。信じあうことが、幸せに繋がると端的に語ってくれます。
「サンタクロースの部屋」
松岡享子 著 こぐま社

 ワクワクと期待して待ち、願いをかなえてくれるサンタクロース。心にサンタクロークを住まわせた子は、サンタクロースの正体を知った後も、その心のスペースに違う「見えないもの」を住まわせ続けることができる。アメリカでの児童図書館司書の経験などを元に、絵本が子どもたちにどのような力を持つか、丁寧に語ってくれる本です。もう古典と言ってもいいくらい書かれてから年月がたちましたが、ここで語られている真実は変わりません。
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