東京の三鷹駅から歩いてすぐのところに、絵本屋「プーの森」があります。店長の野村羊子さんは、絵本を通して、お母さんや子どもたちの心に寄り添ってきました。野村さんにお願いして、大人と子どもに向けて、毎月テーマにあった、お薦めの絵本や書籍を紹介してもらうことになりました。どれも手にとってみたくなります。一緒に絵本の扉を開けてみませんか?
今月のテーマ
「 喜び 」
January-2008
 今日一日を振り返ってみましょうか。良かったこと、楽しかったこと、嬉しかったことはなんですか?この1週間、この1ヶ月でもいいです。何もなかった、といわずに、何か良いことを探し出してみてください。きっとあるはずです。

 「思い出をつくる」ために何かをするのではなく、今この瞬間を楽しみましょう。イベントは、その計画を立てるところから楽しみが始まります。ワクワクしながら準備する。そしてその時を楽しむ。うれしい気持ちが共有できたからこそ、後でいっしょに振り返って笑いあえるのではないでしょうか。

 振り返ると当時は当然と思っていたことが、実は幸せなことだったのだとわかることもあります。つらいと思っていたことが、違う側面から見えることもあります。つらいことを乗りこえたことそのもの、今生きていることそのことを喜ぶということもあるでしょう。

 楽しい思い、幸せな体験の積み重ねそのものが、生きていく力になります。私は、本を読み、物語の主人公といっしょに苦難を乗り越え幸せな体験をすることで、生きるエネルギーをもらえた、と思っています。私の生き延びる知恵のひとつです。

 さて、いくつ良かったことを上げられましたか?出来れば毎日、あるいは毎週、良かったことを思い返してみてください。慣れてくると、ささいな喜びが喜びとして意識できるようになります。それって結構幸せなことではないでしょうか。

「きっと みんな よろこぶよ!」
ピーター・スピアー 
松川真弓 やく 
評論社

  両親が出かけた土曜日。来るはずのシッターが来ないまま、兄弟3人は何を始めたでしょうか。朝、お母さんがお父さんに家の塗り替えいつやって下さる?と言っていたのを聞いていた子どもたち。ガレージや地下室に大量のペンキを見つけて・・・。大人の目から見ると、えー、そんなことしていいの?という感じですが、子どもたちは一生懸命。読み手の子どもたちもダイナミックなペンキ塗りに大喜びです。

 仕事を終えたら、バスルームをペンキだらけにして後片付け。周囲の大人たちの驚く様子もなんのその、「きっと喜ぶよ」と、色とりどりの家を眺めて、至極ご満悦です。

「たんじょうび」
ハンス・フィッシャーぶん、え 
おおつかゆうぞう やく 
福音館書店 

  リゼッテおばあちゃんは、犬とネコと沢山の動物たちと暮らしています。76歳の誕生日、リゼッテおばあちゃんが村に出かけている間に、犬のベロはいいことを思いつきました。おばあちゃんは帰ってきてびっくり。部屋は飾られ、ケーキが焼かれ、りんごにさしたロウソクが76本、きらめいているではありませんか。

 何歳になっても誕生日、自分が生まれた日を覚えていてもらえるのは嬉しいことです。焼けこげたケーキであろうと、思いを込めてお祝いしてくれるのは、いいものです。そんな幸せ感をいっしょに味わってください。

「ふれ、ふれ、あめ!」
カレン・ヘス作 
ジョン・J・ミュース絵 さくまゆみこ訳 
岩崎書店 

  3週間も日照りが続いた暑い日、あたしは薄紫色の空に雲がむくむくわいているのを見つけた。友だちといっしょに水着で通りに出ると、雨が降ってきた!久しぶりの真夏の雨を、大喜びするみんな。
 子どもたちにつられて、母さんたちも裸足で雨の中を踊る。喜びを体中で表現している様子は、本当に楽しそう。雨がやんだ後の、すがすがしさまで味わえます。
 
「うれしい」あなたへ3
レイフ・クリスチャンソン 文 
にもんじまさあき 訳 
ほりかわりまこ 絵 
岩崎書店 

  うれしくなると 心ははずむ」風船のように。一人で嬉しくなるとき、誰かと喜びを分け合うとき、人に喜びをわけてあげるとき。「うれしくなったら 風船はよろこびに赤くそまり」どこまでも上っていく。
 様々な嬉しい場面を簡潔な言葉とシンプルな絵で見せてくれます。
 ティーン向けに描かれた小さな絵本。日常の小さな感動をすくい取りそっと見せてくれるような、そんな絵本のシリーズの中の1冊です。
「喜びの泉−ターシャ・テューダーと言葉の花束」
ターシャ・テューダー 著 
食野雅子 訳 
メディアファクトリー

  昔ながらの暮らしをバーモント州で続けているターシャ。彼女の選んだ言葉に彼女が描いたさし絵を添えたこの絵本。ターシャが喜びを感じた情景、自然や子どもたちを描いた絵、それだけを眺めていても充分楽しめます。ターシャが喜びを与えられたという言葉を読んでそれぞれに秘められた英知を味わうこともできます。
 喜びとは、本当に様々な側面があり、人によって感動する部分は違いますが、幸せを分かち合うことはできるのではないでしょうか。
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