東京の三鷹駅から歩いてすぐのところに、絵本屋「プーの森」があります。店長の野村羊子さんは、絵本を通して、お母さんや子どもたちの心に寄り添ってきました。野村さんにお願いして、大人と子どもに向けて、毎月テーマにあった、お薦めの絵本や書籍を紹介してもらうことになりました。どれも手にとってみたくなります。一緒に絵本の扉を開けてみませんか?
今月のテーマ「コミュニケーション」
January-2007
 けんか、とまではいかなくても、仲良しと行き違ってしまったりすることはよくあることです。けんかしては仲直り、それを繰り返すから、人と人との関係は深まるのだろうと思います。ほんとに幼いうちは、けんかしても、次の瞬間ケロッとして一緒に遊んでいます。ことさらに大げさにしない方が、仲直りも早いのではないでしょうか。どこまで見守るか難しいところでしょうが、悔しい気持ち、悲しい気持ちを受け止めてもらえれば、自然と仲直りができるのではないでしょうか。大人同士の関係でもそうですよね。誰かに気持ちを聞いてもらえれば、本当はどうしたいのか、何を伝えたかったのか見えてくるものです。ただ、圧倒的に力の差がある場合は、違います。力のある方が、ない方の気持ちを本当に思いやれるか、それがけんかといじめの分かれ道かも知れません。

「オオカミクン」
グレゴワール・ソロタレフ 作 
ほりうちもみこ 訳 
ポプラ社 

 子どものオオカミクンとうさぎのトムは大の仲良しです。あるとき「おおかみがこわいぞ」ごっこをしていて、トムは本当に恐くなり、穴に中に逃げ込んでしまいました。トムに相手にされなくなったオオカミクンは、オオカミ山に行き、初めて本当に恐いということを知りました。恐怖を与えている側には、それがわからないものだということを、わかりやすく教えてくれます。子どもたちは、恐いけれど大丈夫、という体験を通して、恐怖を克服することを覚えていきます。でもそれが耐えられないようなものだったら、そこから離れることが一番です。それは弱虫とは決して違うものだということも覚えておきたいですね。

「いじわるブッチー」
バーバラ・ボトナー 文 
ペギー・ラスマン 絵 
ひがしはるみ 訳 
徳間書店


 私のママとブッチーのママは大の仲良しで、しょっちゅう遊びに来る。子ども部屋でブッチーは恐竜になり、あたしをたべちゃおうとする。あるとき、ブッチーが泊まることになり、私は新しい遊びを考えた。短い文章と、言葉以上を物語る絵が楽しませてくれます。相談されたママが、あたしが自分の力で解決できるようサポートしているのもいいのではないでしょうか。
「けんかのきもち」
柴田愛子 文 伊藤秀男 絵 
ポプラ社


  学童でギョウザを作った後、とっくみあいのけんかをしたぼく。うちに帰ってお母さんにくっついて泣いた。先生が誘いに来たら、お母さんギョウザ食べに行っちゃった。ぼくのけんかの気持ちは終わってない。うわぁーうわぁー泣いて、お母さんが持って帰ってきたギョウザをばくばく食べて、やっとけんかの気持ちが終わった。迫力ある絵と、短い言葉で、ぼくの気持ちの動きをぐいぐいと見せてくれます。変になだめない先生や気の済むまで泣かせてくれるお母さんがいいですね。それに、怒ったりしたときは、お腹に何か入れると気持ちが落ち着いてくることがありますよ。
「ごめんね ともだち」新装版
内田麟太郎 作  降矢なな 絵 
偕成社


 仲良しのオオカミとキツネ。二人で遊んでいたのに、キツネばっかり勝ち続け、オオカミが怒ってしまった。ごめんねと言おうと思ったのに、次の日会ったら声が出ないオオカミとそっぽを向くキツネ。さて、二人は仲直りできるのでしょうか??オオカミとキツネを軸に、友情をテーマにあれこれ考えさせてくれる「ともだちや」シリーズの1冊です。もちろん最後はハッピーエンド。きっかけは何であれ、仲直りしたいと思っている二人の気持ちが、伝わり合えば大丈夫なのでした。
「きみなんかだいきらいさ」
ジャニス・メイ・ユードリー 文
モーリス・センダック 絵 
こだまともこ 訳 
冨山房


 もうジェームズなんか大嫌いさ。あれこれ、ジェームズの悪口を言い立てるぼく。どんどんその気になって、ジェームズの家まで行って「絶交」を宣言する。そうなればジェームズも当然同じ言葉を返してくる。別れた直後、ぼくは振り返り、ジェームズに一緒に遊ぼうと言い出す。ジェームズももちろんOK。二人で仲良く遊び出す。何だかこのけんかも、遊びの一つだったみたい。幼い子のけんかの特徴を良く捉えている絵本です。
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